ノートパソコンでウェブサイトにログインしようとしていたときだった。スコット・ノーバーさんは気付くと、ジャケットとベストを着た森の生き物の周りに花と何切れかのスイカが浮かんでいる奇妙な絵をじっと見つめていた。「アライグマのちょうネクタイをクリックしてください」。指示にはそう書かれていた。フリーランスジャーナリストのノーバーさんは、CAPTCHA(人間と悪意あるボットを区別するためにウェブセキュリティーの専門家が作り出したうっとうしいテスト)の奇妙な新世界に足を踏み入れていた。ネットユーザーは何年も前から、ネットショッピングを利用したり、ソーシャルメディアのアカウントにログインしたりする際、ゆがんだ文字でつづられた単語を解読したり、バスの絵をクリックしたりすることなどを求められてきた。そうした課題は面倒ではあっても、簡単なものが多かった。しかし、今は風変りなものになり、ユーザーはこれまでより多少頭を使わなければならない。