米国はイスラエルをコントロールできるのか

秋山 バイデンが継投する可能性もあるということですが、バイデンもすでに「死に体」に見えます。今回のイスラエルのイランの大使館への爆撃など、米国の制御力がなくなり、イスラエルになめられている感じがします。

渡部 イスラエルの軍事作戦によるガザでの民間人の死者が3万人超となっている中で、パレスチナに同情的な民主党のリベラル派と若年層は、イスラエル支持を変えないバイデンに不満を持っている。民主党の予備選では、NGOがバイデンへの抗議のために「支持なし票」を投じる運動が活発化し、接戦州のミシガンでは13.8%を占めました。

 一方で共和党はイスラエル支持でまとまっており異論は少ない。イスラエルとハマスの衝突について、どちらが良い政策を執れるかという質問に、トランプ46%、バイデン38%と、トランプが8ポイントも上回っている(参照)。

秋山 トランプ時代は、今のイスラエルのネタニヤフ首相と娘婿のジャレッド・クシュナーが家族ぐるみの付き合いで、イスラエルべったりの政策をとっていましたよね。米国大使館をテルアビブからエルサレムに移したことも記憶に新しい出来事です。

渡部 一つにはハマスにもイスラエルにも強硬な姿勢を取ることができ、予測不能なトランプの方が、ハマスもイスラエルも言うことを聞くのではないかと考えている米国民が多いということでしょう。実際、トランプはネタニヤフ首相と関係が近く、過去の保守派政権と比べても、極端なイスラエル寄りの政策をとってきました。しかし、2020年の選挙でトランプに勝利したバイデンに対して、ネタニヤフが祝福のメッセージを送ったことを根に持ち関係は悪化した。ハマスがイスラエルにテロ攻撃を行った際には、「(ネタニヤフ氏は)準備ができていなかった。トランプ政権下なら準備する必要はなかっただろう」と批判し、やはりイスラエルと衝突しているレバノンの武装組織ヒズボラを「非常に賢い」と評しました。トランプの度量の小ささが、結果オーライになっている(笑)。

秋山 ただ、政治において、イメージだけでも「やるときはやるぞ」と思わせる強さは重要ですよね。

渡部 ええ。トランプには、何をするかわからない怖さがある。外交でもそういう期待を持たせることができる。反対にバイデンは見た目が弱そうなだけではなく、強硬外交を嫌う民主党内の左派に配慮しなくてはならないため、強硬路線を打ち出しにくいという内部事情もある。