外遊の「遊」は、遊びという意味ではない
もうすぐゴールデンウィークが始まる。コロナが明けたことで、今年は多くの政治家が外国に出かけるだろう。もちろん公務(ということ)である。
地位のある人が外国に行くことを一般的に「外遊」という。昭和の時代には、政治家はもとより、企業の社長などもよく「外遊」していた。ここでの「遊」とは、遊ぶことではなく、遊軍記者や遊撃手の「遊」と同様、自由に動き回ることを意味しており、決して遊びほうけるといったニュアンスはない。
しかし、我々、一般人の多くは、「外遊」というと、政治家が海外で物見遊山に興じるニュースを聞き慣れたせいもあって、海外に遊びに行く旅行のことだと思っている。
かたや、ビジネス社会においては、「物見遊山」という意味での「遊」的要素のある海外出張は今や明らかに少なくなっている。だから、企業では「外遊」という言葉は現在ほぼ使われていない。
サプライチェーンの国際化や海外での売上比率の高まりから、外国の取引先や業務に関係する会社と、ビジネス上の深い関係を構築する必要性は高くなっている。国内ビジネスの従事者からは、頻繁に外国を訪れる上司や同僚に対して「あちらこちらに行けてうらやましい」という声が寄せられるかもしれないが、そういう会社は、明らかに国際化の遅れた会社である。実際に海外出張のハードな業務内容を知っていれば、「海外で遊ぶ」といった優雅な行動を思い浮かべることはないだろう。