ともにリスクを背負い、コストを負担する

 僕は楽天イーグルス時代によくお聞きしていた小澤さんの起業話が好きで、今回の本でも触れさせてもらいました。印象的なのは、「ビズシーク」という最初に起業された会社の立ち上げ方です。

小澤隆生(おざわ・たかお)
1999年にビズシークを創業。2001年、ビズシークを楽天に売却し、楽天グループの一員に。2003年ビズシークの吸収合併により楽天入社。2005年、楽天イーグルス立ち上げ担当として楽天野球団取締役事業本部長に就任。2006年に楽天グループを退社、スタートアップベンチャーへの投資やコンサルティング業務を行う。2011年、クロコス設立。2012年にクロコスのヤフー売却に伴ってヤフーグループの一員に。10月にYJキャピタル取締役COOに就任。

小澤 僕はいつか起業するという目標を持って、最初の会社に入社しました。そこで135人の同期が顔合わせしたときに、「会社をつくりたい人、一緒に勉強会をやろう」と呼びかけたんです。すると15人ぐらいの手が挙がりました。そこで毎朝、「まずは何をするかから考えよう」とファストフード店に集まり、勉強会をしました。

 当然、全員のバックグラウンドも違うし、ITのスキルも違うし、そもそも1995年のことだから、「インターネットって何?」という状況です。新しいアイデアを出してはボツにするということを繰り返しました。全員が各部署に配属になり、毎朝会えなくなってからは、毎週木曜日の19時から「シャノアール」という喫茶店で同じことをずっと続けてきました。

 こんな調子で、アイデアを出し、毎回宿題を作ってはそれを解決するということを2年間やり続けた結果、あるサービスが生まれました。そのサービスをとりあえず立ち上げ、みんなで土日と平日の夜を使ってサービスを運用し続けたのです。

 そのときの経費はみんなで少しずつ出し合いました。楽しいことをやるのだから、金を払ってあたりまえだというロジックです。もちろん最初は、お金を出し合うことに反対する人もいました。でも、「スキーやゴルフなど、楽しいことには金を払う。同じように、この勉強会も俺たちは楽しいと思ってやっている。しかも世の中が変わる可能性があるなんて、こんなに楽しい話はないだろう?なのに、なぜその事業にお金を払わないのか?」と。

 部活動の「部費」みたいな感じですね。

小澤 そうですね。「仲間」と「従業員」は違います。僕は、「仲間」はお金を払って雇用するものではないと考えています。むしろ同じ側に立つ者同士として、全員がコストを負担してひとつのプロジェクトを背負う。労働というコストやお金というコスト、さまざまなものを負担して同じ側に立つから仲間なのであって、僕が仲間にお金を払うということはまずありません。僕だけが負担するスタイルだったら、みんなは僕のプロジェクトにお手伝いで参加するだけになってしまいますから。