「事業は人なり」という。しかし、「人」に腐心している起業家はどれだけいるのだろうか。スタートアップは、サービスやモノをつくること、そして売る(ユーザーを得る)ことに集中するのが常だ。そのため、「人」や「組織」に関するスキルや経験が薄いこともあって、それらの課題がおろそかになりがちだ。
お金のKA(こいつらアホか)について第4回で書いたが、これらの課題は可視化し難く、何が正しいと言い難い。なかには、スタートアップ特有の「事業創造の勢い」で多少のことは埋没させて、大きな問題に発展しない例もないわけではないが、致命傷になることも多い。
人と組織の問題は、起業家個人の個性や本人の成長に深く根差しており、難物だ。だが、何もできないわけではない。今回は、この人と組織について取り上げたい。
人と組織は問題だが
知らないことを認めようとしない起業家
あるセッションで、数人規模のスタートアップを率いる起業家の「いつCOOやCFOを雇えばいいのでしょう?」との質問があった。それに対して、先輩のベンチャー経営者たちは「分類学的な人材のタイプ分けは後付けのことも多く、成長企業では逆に結果としてCOO的な人が育った、ということの方が多い」あるいは「そもそもCXOなど数人体制では要らない。よくスタートアップでバチっと体制が固まっていることがあるが、不要だと思う。できることを全てやっているのがベンチャー。機能分化してはやっていられない」と答えていた。
人と組織については色々と理論があるが、それぞれのスタートアップの場面でそのどれが役に立つか、心得ている起業家は少ない。それどころか、上記のように、バズワードに惑わされていることも多い。
ほとんどの場合、スタートアップにあるのは、人材のみだ。しかし、なんとなく凌いでいるのが実情かもしれない。自分も人だし、人について何も知らないわけではないが、スタートアップでよいチームをつくるのは別の話だ。それにエンジニアの創業者であろうと、人と組織の課題を避けることはできないのだ。