「とっさの質問にうまく答えられない」「『で、結局、何が言いたいの?』と言われる」「話し方やプレゼンの本を読んでも上達しない」……。そんな悩みを持つ方は、言語化の3要素である「語彙力」「具体化力」「伝達力」どれかが欠けていると指摘するのは、文章や話し方の専門家であり言語化のプロである山口拓朗氏。本連載では、山口氏による話題の最新刊「『うまく言葉にできない』がなくなる言語化大全」の中から、知っているだけで「言語化」が見違えるほど上達するコツをご紹介していきます。
話の解像度を高める3つのポイント
ここまでで、情報や事実、感想や意見などを具体化して解像度を高めていくためのノウハウを挙げてきましたが、この過程において特に意識しておきたいことがあります。それが次の3つです。
①数字を使う
②固有名詞を使う
③抽象的な言葉を少なくする
それぞれ説明していきましょう。
①数字を使う
「数字」を使うだけで情報の解像度が跳ね上がります。
たとえば「かなり多くの人が参加した」を「100人が参加した」と言い換えるだけで映像が浮かびやすくなります。
数字を使うと、比較もしやすくなります。「商品Aよりも商品Bのほうが少し安い」よりも、「商品Aは1000円、商品Bは700円。商品Bのほうが300円安い」のほうが断然わかりやすい。
また「嬉しさ80%、緊張20%」のように、感情という目に見えないものを具体化するときにも、数字が役に立ちます。
程度を表す際に、あいまいな言葉を使いそうになったら、「数字に置き換えられないかな?」と、一旦立ち止まって考えるようにしていきましょう。
②固有名詞を使う
そもそも、言葉というのは「分ける」ために存在しています。たとえば、「動物」と「人間」を分けたり、「会社員」と「フリーランス」を分けたり。
そんな中で具体化を進めていくためには、小さなグループにどんどん落とし込んでいく必要があります。つまり、物事を具体化していくと最終的には「固有名詞」に行き着くということです。
固有名詞を使わないことで思わぬトラブルにつながるシーンもよくあります。
たとえば、外出先で同僚と待ち合わせをするとき。
「A社の近くの駅に集合」とした場合は、「近くの駅」の解釈が二人の間でずれる恐れがあります。
同僚は「B駅」だと思うかもしれないし、あなたは「C駅」だと思うかもしれません。解釈のずれをなくすためには、「◯◯駅の△出口」まで落とし込む必要があるでしょう。
ビジネスでターゲット設定するときも、「都会の生活から離れたい20代夫婦」よりも、「5年以内に石垣島か宮古島への移住を目指す20代夫婦」のように固有名詞を使ったほうが、イメージが明確化しやすく、ターゲットに刺さる言葉も紡ぎやすくなります。
言うなれば、固有名詞は“具体性の究極”です。使えそうな場面では積極的に使うことをおすすめします。
③抽象的な言葉を少なくする
言葉は、実はとても曖昧です。一見、共通認識が成立しているように見えても、実際は、自己解釈の上に成り立っています。
たとえば、「責任を取る」という言葉。
大きなミスをして会社に損害を与えた人が、「私が責任を取ります」と言った場合、どう解釈しますか。「会社を辞める」とも「損害を自分で負担する」とも、色々な解釈ができます。
そもそも、日本語は、「察する」をベースに使われることが多いです。「持ち帰って検討します」が、その場の空気によっては「お断りします」を意味していることもよくあります。
しかし、国際化が進む現代社会において、日本人も誤解を生まないよう、はっきり伝えることが求められ始めています。
そのためには、自分と相手の解釈にずれが生じやすい「抽象度の高い言葉」を避ける意識が必要です。