<正解>

 ケーキを食べたのはB、C、D

 誰が正直者で嘘つきなのか、そして犯人は何人いるのか、わからないことだらけの難問です。
 さらには、3つの質問に対する7人の容疑者の回答という手がかり。
 難問に分類される問題は、いつも決まって少なすぎる情報量が私たちを悩ませてきました。
 しかし本問では、それに反するかのような「大量の情報」が乱舞しています。
 錯綜する情報をうまく解きほぐせるかどうか。
 7人の回答を何度も見返して、混乱せずにひとつずつ対処していきましょう。

立ちはだかる「二段階の証明」

 この問題の最大の特徴は、「誰が正直者で、嘘つきなのか」のみならず「誰がケーキを食べたのか」を見抜かなければいけないところです。

 通常、この手の問題では「正直者と嘘つきを識別すれば解決」というものが多く見られます。
 しかし本問で聞かれているのは「ケーキを食べたのは誰か」という点。

 正直者がケーキを食べたのかもしれない。
 嘘つきはケーキを食べていないのかもしれない。
 複数の正直者と嘘つきがケーキを食べたのかもしれない。

 可能性を考え出すと混乱しますが、さすがに「正直者と嘘つきを区別せずにケーキを食べた犯人を探し出す」なんて離れワザができるとは思えません。
 どうやら「正直者と嘘つきを区別し、その上で犯人を探す」という二段階のステップが必要になりそうです。

「7つの回答」を単純化する

 解決のヒントになるのは、7人の回答しかありません。
 それぞれの回答を検証していくとさらに混乱するため、まずは、

 いずれかの質問の回答に着目して7人をグループ分けしましょう。

 あなたがした質問のうち、どれが「とっかかり」になるでしょうか。
 これを考えてみましょう。

 “①「あなたはケーキを食べた?」”

 1番目の質問は、最初に考えても意味のない質問です。
 なぜならこの質問の回答に着目しても、「はい」と「いいえ」の2グループにしか7人を分けられません。
 それでは状況はあまり変わらず、検証の複雑さも変わりません。

 また、この質問への「はい」と「いいえ」という回答が、それぞれ「真実なのか嘘なのか」も特定できません。
「はい」と答えた場合、「正直者で、かつ犯人」「嘘つきで、かつ無実」の両方が考えられます。
 全体における正直者と嘘つきの内訳が未確定である段階では、それぞれの回答を検証していっても、原理的に解答には到達できません。

 “②「7人のうち犯人は何人?」”
 “③「7人のうち正直者は何人?」”

 1番目の質問に比べたら解決のヒントにはなりそうです。
 ただ、3番目の質問の回答で7人をグループ分けしても、結局は2番目の質問でのグループ分けと同じような結果になりそうです。

 というわけで、まずは2番目の質問の回答で7人をグループ分けしてみましょう。
 すると、こうなります。

 A「犯人は1人」
 D「犯人は4人」
 C,G「犯人は2人」
 B,E,F「犯人は3人」

 では、それぞれについて考察していきます。

「犯人は1人」と答えたA

 まずはAから。Aは3つの質問にこう答えています。

 “A「自分が犯人で、犯人は1人、正直者は1人」”

 これらの発言が真実、つまりAだけが正直者だと仮定して考えてみます。

 となると、A以外は全員「嘘つき」になります。
 すると、「自分は犯人ではない」と述べているC,D,E,Fの4人は犯人だということになります。
 これは「犯人は自分1人だけ」という、A自身の発言と矛盾します。

 よって、Aは「正直者」ではなく「嘘つき」だとわかります。
 ということで、質問へのAのその他回答から、

 ・Aは嘘つきだが無実
 ・犯人は1人ではない
 ・正直者は1人ではない

 が確定しました。

「犯人は4人」と答えたD

 次に、「犯人は4人」と答えたDの発言を見てみましょう。

 “D「自分は無実で、犯人は4人、正直者は1人」”

 先ほど、同じく「正直者は1人」と答えたAが嘘つきだとわかりました。
 そして、Dも「正直者は1人」と答えています。
 よって、Dも「嘘つき」です。
 ということで、質問へのその他の回答から新たに、

 ・Dは嘘つきであり犯人
 ・犯人は4人ではない

 が確定しました。

「犯人は2人」と答えたC、G

 次に、「犯人は2人」と答えたC,Gの発言を見てみましょう。

 “C「自分は無実で、犯人は2人、正直者は2人」”
 “G「自分は犯人で、犯人は2人、正直者は2人」”

 回答している「犯人」と「正直者」の人数が一致していることから、2人の発言の真偽は連動するはずです。

 まず、ここまでにわかっている「正直者は1人ではない」「犯人は4人ではない」という情報と、2人の回答は矛盾しません。
 では、CとGの2人が正直者である場合を考えてみましょう。

「正直者は2人」と、CとGが答えているため、CとGの2人以外は全員嘘つきということになります。
 ということは、「自分は無実」と言っているD,E,Fの3人は嘘つきであり、本当は犯人だということになります。
 しかしこれでは、Gも含めたD,E,Fの4人が犯人となり、「犯人は2人」というG自身の発言と矛盾します。

 よって、C,Gは「正直者」ではなく「嘘つき」です。
 ということで、質問へのその他の回答から、

 ・Cは嘘つきであり犯人
 ・Gは嘘つきだが無実
 ・犯人は2人ではない
 ・正直者は2人ではない

 が確定します。

「犯人は3人」と答えたB、E、F

 最後に、「犯人は3人」と答えたB,E,Fの発言を見てみましょう。

 “B「自分は犯人で、犯人は3人で、正直者は3人」”
 “E「自分は無実で、犯人は3人で、正直者は3人」”
 “F「自分は無実で、犯人は3人で、正直者は3人」”

 いよいよ大詰めです。
 これまでに確定したことを振り返ってみましょう。

 ・B,E,F以外の4人はすべて嘘つき
 ・CとDは犯人

 また、本問には「少なくとも1人は正直者がいる」という条件が存在します。
 つまりB,E,Fの少なくとも1人は正直者です。

 ですが、B,E,Fの「犯人」「正直者」に関する発言は一致しています。
 これが示すのは、B,E,Fの全員が正直者であるということです。

「犯人」は誰だ

 これで、全員の内訳がわかりました。
 まとめると、以下のようになります。

 A=嘘つき・無実
 B=正直者・犯人
 C=嘘つき・犯人
 D=嘘つき・犯人
 E=正直者・無実
 F=正直者・無実
 G=嘘つき・無実

 ということで犯人は、嘘つきであるC,Dと、自分が犯人だと告白している正直者のBの、3人です。

「思考」のまとめ

 なかなか難解な問題でしたが、やっていることはシンプル。
 7人をグループ分けして、グループごとに「この人が正直者なら」「嘘つきなら」と仮定して、発言の内容に矛盾がないかを検証していっただけです。
 ポイントとなったのは、まず回答の内容によってグループ分けするということと、最初にどの質問の回答に着目するかを考えたところでしょう。

 このように、情報量が多すぎる問題に取り組むときは、まずは「絞る」「まとめる」といった「単純化」の作業をすると、一気に糸口が見えてきます。
「絞る」「まとめる」はビジネスの現場でも重要なことなので、私も複雑な問題にぶち当たったときは、いつもこの2つの作業から着手しています。

 ・わかっている情報が多いときこそ、整理して俯瞰する思考が重要
 ・「絞る」「まとめる」などの単純化で整理すると、糸口が見えてくる

(本稿は、『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から一部抜粋した内容です。)

野村裕之(のむら・ひろゆき)
都内上場企業のWebマーケター。論理的思考問題を紹介する国内有数のブログ「明日は未来だ!」運営者
ブログの最高月間PVは70万超。解説のわかりやすさに定評があり、多くの企業、教育機関、テレビ局などから「ブログの内容を使わせてほしい」と連絡を受ける。29歳までフリーター生活をしていたが、同ブログがきっかけとなり広告代理店に入社。論理的思考問題で培った思考力を駆使してWebマーケティングを展開し、1日のWeb広告収入として当時は前例のなかった粗利1500万円を達成するなど活躍。3年間で個人利益1億円を上げた後、フリーランスとなり、企業のデジタル集客、市場分析、ターゲット設定、広告の制作や運用、セミナー主催など、マーケティング全般を支援する。2023年に現在の会社に入社。Webマーケティングに加えて新規事業開発にも携わりながら、成果を出している。本書が初の著書となる。