「プレゼン力」が飛躍的に上がる方法を1つ教える。あなたが使いたい数字を、「数字を使わずに」言い換えるのだ。
「すべての数字は“翻訳”する必要がある」。そう主張するのは、スタンフォード経営大学院教授のチップ・ヒースだ。彼が学生に教える「ただの数字」を「感情を動かす数字」に変える具体的方術を100連続公開する新刊『数字の翻訳』が、刊行される。
本記事では、その中から「人種間差別」を鮮烈に伝える1つの具体例を紹介する。(構成・写真/今野良介)
事実を強調する「数字の翻訳」
「数字の翻訳」とは何か、人種間不平等に関する例で紹介しよう。
ある実験で、2人の黒人男性と2人の白人男性の被験者が、地元紙の求人広告に載っていたいくつかの会社に履歴書を送付した。
どの被験者も、半数の履歴書に「麻薬関連の重罪で有罪判決を受けて18ヵ月間服役した」と書き、残り半数の履歴書には「犯罪歴はない」と書いた。
結果はこうだ。
「深刻な人種差別が現に存在する」という、あなたがおそらくすでに知っている事実を伝えている。犯罪歴のあるなしにかかわらず、白人の求職者は黒人よりずっと有利なのだ。
しかし、その事実を、数字を全く使わずに、より印象的に伝えることができる。
こうだ。
ただ人種差別があるというだけでなく、犯罪歴のない黒人が前科のある白人よりもさらに不利な扱いを受けるほどなのだ。
この比較を読めば、人種の壁がどんなに高いかが腑に落ちる。白人の読者は、自分が重罪犯並みの扱いを受けたらどんな気持ちになるだろうと想像する。
そして、就職市場ではただ黒人というだけで白人の重罪犯よりひどい扱いを受けるという事実が、パンチのように効いてくる。この「数字の翻訳」がなければ、相手にパンチを届けられない。
最初の例を見て、この現実に気づくまでにどれくらい時間がかかるだろうか。データを斜め読みしただけで、最も重要なポイントを理解せずに先へ進んでしまうだろう。
重要なことを表すデータがあるときは、それ以外の数字は省いて、ズバリ要点を突こう。
ただ目で追うだけでなく、目で見て肌で感じられるような数字を使おう。
(了)
※本記事は書籍『数字の翻訳』の一部を元に編集しています。