「プレゼン力」や「企画書の説得力」が飛躍的に上がる方法を教える。
資料の中にある数字を、「数字を使わずに」言い換えるのだ。
「“数字に弱い人”なんていない」。そう主張するのは、スタンフォード経営大学院教授のチップ・ヒースだ。彼が長年学生に教えている、「ただの数字」を「感情を動かす数字」に変える具体的方術を100連続公開する新刊『数字の翻訳』が、6月4日に刊行される。
本記事では、本の中から1つの具体例を紹介する。(構成/今野良介)
数字は「翻訳」しないと伝わらない
次の例は、私が中学時代に理科の授業で教わった、自然環境に関する事実だ。
「地球には水があふれているのに、飲める水はごくわずかだ」ということを伝えようとしている。
まず、数字が多い文例は次の通り。
このままでも説得力があるが、記憶に残りにくい。
しかし、その「翻訳版」は、教わってから20年近く経った今もまだ覚えている。
こうだ。
世界の深遠な真実が腑に落ちた時の喜びと、親や年上の人にそれを教えて驚かせた時の誇らしさは、今も忘れられない。
単純で、複雑な数字を1つも使っていないのに、中学生のときにそれを読んだ私が大人になっても覚えているほど、心に響く翻訳なのだ。
「2リットルのペットボトル」というたとえを使えば、数字に強くない人でもパッと理解できる。
元の文例では、パーセントや小数が出てきただけで慌てふためき、そこで読むのをやめてしまう人がいるかもしれない。「2リットルのペットボトル」なら、ただ理解できるだけでなく、自信を持って誰かに説明できそうな気がする。
「0.0025%だっけ、それとも0.25%だった?」「97.5%と99%のどっち?」なんて迷うこともない。2リットルのペットボトル、角氷、水滴。とてもシンプルだ。
数字は、適切に「翻訳」されれば、誰もがその美しさを愛でることができる。数字と人間の思考の仕組みを理解すれば、何十年も記憶に残るような方法で、環境に関する重要な事実を示すことができるのだ。
本書では、こうした「数字の翻訳」の具体例を紹介していく。数字や数学を扱う能力のあるなしにかかわらず、誰にでも役立ててもらえるようになっている。
(了)
※本記事は書籍『数字の翻訳』の一部を元に編集しています。