『おじいちゃんが教えてくれた 人として大切なこと』という一冊の本が刊行される。手の付けられない乱暴な子に育った著者が、思春期の頃、おじいちゃんに教わった「人生の教訓」について書いたものである。そして実は、タイトルにある「おじいちゃん」とは、かの有名な「ガンジー」のことなのだ。12歳だった孫の人生を変えたガンジーの教えとは? 世界中の人々が「自分」と向き合うきっかけとなった本書の邦訳を記念して、その一部を特別に公開する。
もともとガンジーも怒りっぽかった
そもそもバプジ(「祖父」の意味)は、怒りの正しい使い方をどこで学んだのだろうか。私は本人に直接尋ねてみることにした。
「バプジ、一つ聞いてもいいですか?」
「もちろんだよ」
「バプジはどうやって怒りの正しい使い方を習ったの? 怒りが役に立つことや、怒りに力があることを最初に知ったのはいつ?」
バプジは糸車を回す手を止めると、声を上げて笑った。
「おまえのお祖母さんから教わったんだよ」
「そうなの? どうやって? いったい何があったの?」
「私はほんの子どものうちに結婚したから、妻をどう扱っていいのかまったくわかっていなかった。だから学校が終わると図書館へ行って、結婚生活についての本を読んで勉強したんだ。ある日、おまえのお祖母さんと喧嘩になったとき、私が大声で怒鳴ると、お祖母さんは静かな声で冷静に答えた。それで私は何も言えなくなってしまった。
後になって、この出来事について考えてみた。たいていの人は、怒ると冷静に考えられなくなり、バカなことをしてしまう。でもおまえのお祖母さんは、そんな状況を丸く収める天才なんだ。
もしお祖母さんも怒鳴り返していたら、そのまま大喧嘩に発展してしまっただろう。そこからとんでもない結果になっていたかもしれない。そのことについて考えれば考えるほど、すべての人が怒りを正しく活用しなければならないと確信するようになったんだよ」
怒りに、怒りで応えてはいけない
私の祖母は、私がインドに来る少し前に亡くなっていた。バプジと一緒に市民的不服従の罪で逮捕、投獄され、牢獄の中で息を引き取った。バプジはとても悲しみ、追悼の祈りを毎月行っていた。
バプジの話を聞いて、怒っている人に冷静に対応することの大切さを理解することができた。
たいていの人は、怒りには怒りで応えてしまう。怒鳴られたら怒鳴り返し、双方の怒りのレベルがどんどん高くなる。しかし反対に、自分を傷つける人、自分を怒らせる人に優しく対応すれば、状況を一変させることができるのだ。
(本記事は、『おじいちゃんが教えてくれた 人として大切なこと』(アルン・ガンジー著、桜田直美訳)の一部を抜粋・編集したものです)