就職先としてコンサル業界の人気が止まらない。給与の高さ、コンサルの経歴が転職の際に有利に働くことが他業界にはない大きな魅力だ。コンサル業界にはフェルミ推定やケース面接と呼ばれる独特の入社試験があり、総合商社や外資系投資銀行、スタートアップ企業でも実施されている。新刊『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』は、大手コンサルティングファームの入社試験に対して、現役コンサルタントや内定者の解答を集約した前代未聞の1冊だ。就活対策にはもちろんのこと思考のトレーニングにも最適だ。本稿では、特別に本書から一部を抜粋して紹介する。
具体的にフェルミ推定問題の検討手順を見ていきましょう。
次の4つのステップを意識することで、難解な問題も自信を持って回答できるようになります。
Step1
曖昧な言葉を定義し、推定範囲を特定する
まずは、フェルミ推定の対象を明確にします。
たとえば、「日本のサッカー人口を推定せよ」と出題された場合、それはサッカーをする人を意味するのか、サッカーを教える人や観る人まで含めるのか、「サッカー人口」という曖昧な言葉を定義して、どこまで推定するかの範囲を特定する必要があります。
ここでのポイントは「自分で自分の首を絞めないこと」です。
あらゆる人を網羅的に推定対象に含めようとはせず、限られた時間で推定できるように、サッカーをする人のみ推定するとよいでしょう。
また、サッカーをする人と言っても、プロのサッカー選手もいれば、サッカー部に所属する学生、休日にサッカーをして遊ぶ親子まで幅広いため、たとえば「プロ・アマを問わず、何らかのチームに所属してサッカーをしている人」などと範囲を特定し、面接官と共有します。
Step2
わからない数字をわかる数字に分解する
推定対象とその範囲を明確にしたうえで、推定方法を検討します。サッカー人口であれば、
日本のサッカー人口
=プロ・アマを問わず、何らかのチームに所属してサッカーをしている人
=[人口]×[何らかのサッカーチームに所属している割合]
=[小学生の人口×サッカークラブに所属している割合]+[中高生の人口×サッカー部に所属している割合]+[大学生の人口×サッカー部・サッカーサークルに所属している割合]+[社会人の人口×プロまたはアマのチームに所属している割合]
と、わかる数字の組み合わせに分解します。
上記の推定式では、人口を小学生・中高生・大学生・社会人の4つに分解していますが、こうすることで各々のサッカーチーム所属割合をより明確なイメージを持って設定できます。
場合分けを細かくしすぎると、計算が複雑になり時間が足りなくなってしまいます。
「さすがに学生と社会人では、サッカーチームへの所属割合は大きく異なるだろう」といったように、一括りで検討することに大きな違和感を覚える点を考慮することが重要です。
なお、「わかる数字」とお伝えしていますが、実際にはどれだけ頑張っても「何となくでしかわからない数字」や「正直よくわからない数字」が出てきてしまうこともあります。
たとえば、「社会人のサッカーチーム所属割合」などは想定しづらいでしょう。
ただ、属しているコミュニティの傾向など、日常で観測した情報から社会人の所属割合を想定することはできるので、面接官には「何となく感覚で数字を想定しました」とは言わずに、「大学時代に何らかのチームに所属していた人の10人に1人は、社会人になっても活動していると想定しました」などと理由を伝えましょう。
Step3
計算実行
わからない数字をわかる数字の組み合わせに分解できたら、各要素に数値を設定して計算していきます。
このとき、面接官への説明のしやすさの観点から、次のような表形式で数値設定と計算結果を示すことをおすすめします。
どのような場合分けをしていて、場合ごとにどのような数値設定をしているのかをパッと見せられる工夫をすれば、皆さん自身も話しやすくなりますし、面接官からの評価も確実に高まります(実際、選考突破者の多くはこのような見せ方をしています)。
なお、フェルミ推定問題においては桁間違いの計算ミスがよく見られるため、次の表のように大きな数字は単位を揃えて小さくするとよいでしょう。
フェルミ推定は正確な数値を導くものではなく、短時間で推定対象の規模感を概算するものですので、一の位まで細かな数値を設定せず、容易に計算できる概数(丸めた数値)を設定しましょう。
本書では読みやすさの観点から、パーセント(%)表示としていますが、実際の推定では、分母を揃えた分数で記載すると計算がしやすくなります。
Step4
振り返り、改善点の洗い出し
推定後は必ず振り返りをしましょう。計算の確認はもちろん、推定結果は実際の値よりも大きそうか小さそうかと評価し、その要因は何であるか検討します。
さらに時間があれば、どの部分をより丁寧に分解して数値を設定するべきかについて改善点を洗い出しておきましょう。
実際には、推定の過程においても「ここは大胆な想定を置いているな」「時間があれば、さらに分解したいな」などと改善点を押さえておき、面接官とも認識を共有しながら進めるとよいでしょう。
推定後の面接官からの評価や改善点を確認するような質問に自信を持って対応するためにも、必ず振り返りを実施しましょう。
(本稿は『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』から一部を抜粋・編集したものです)