今、学生や転職者から最も人気の就職先の一つがコンサルティング業界だ。数多くの志望者の中から、一握りの有望な人材を見抜くために、この業界にはフェルミ推定やケース面接と呼ばれる独特の入社試験がある。新刊『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』は、大手コンサルティングファームで実際に出題された問題を集め、現役で活躍するコンサルタントに解答してもらうことで、コンサル流の思考法をノウハウとして凝縮した1冊だ。就活対策にはもちろんのこと、思考力のトレーニングにも最適だ。本稿では、本書執筆者の1人で現役コンサルタントのRIO氏に、外資系コンサルティングファームが人気の理由と選考プロセスについて話を聞いた。
「とりあえずコンサル業界に就職したい」と考える学生が増えている
――近年コンサルティング業界が、就活で人気になっていると聞きますが、その理由はどこにあるのでしょうか。
RIO氏:最近の傾向として、とりあえずコンサルティング業界を目指そうという学生が非常に増えていて、「とりコン(とりあえずコンサル業界に就職)」という言葉も一般的になっています。
――なぜ、数ある業種や職種の中で「とりあえずコンサル」と考える学生が多いのでしょうか。
RIO氏:目まぐるしく変化する時代の中で、何もわからないまま一つの業界に腰を据えることをリスクだと捉えているからではないでしょうか。
その点でコンサルタントの仕事は、プロジェクトごとに様々な業界に入り込んで、クライアントの経営課題と向き合う仕事なので、将来に色々なキャリアの選択肢を残せると職業だと言えるかもしれません。
一般的な企業では、いわゆる下積みのような期間を過ごすケースが多く、気づいたときには転職するには遅い年齢になってしまうこともありえます。
コンサルティングファームの仕事は、一般的な企業ではかなり上のポジションに就かないと向き合えないような経営課題を1年目のコンサルタントから新卒であろうと関係なく、必死になって取り組むことになります。
先輩のコンサルタントたちからはもちろん、クライアント企業の経営層や担当者からも学びながらアウトプットし、フィードバックを受けるといった魅力的な成長機会を得ることができるのです。
コンサルティングファームの採用プロセス
――コンサルティングファームの一般的な選考プロセスを教えてください。
RIO氏:まずエントリーシートを提出してウェブテストを受けます。それを突破すると1次面接に呼ばれるわけですが、この段階でケース面接問題やフェルミ推定問題が出題されます。
一般的な会社における新卒採用の面接では、志望者のパーソナリティに関すること、たとえば「学生時代に力を入れたこと」などを聞かれると思いますが、そのような人物面接に加えて、「東京都の通勤ラッシュを解消するには?」といったような、志望者の思考力を試すケース面接が行われます
面接官との1対1で行われる場合もあれば、グループディスカッションや筆記テストの場合もあります。
基本的には、このような面接が2~3回実施された後、3次面接ないし4次面接の段階で、コンサルティングファームのパートナーが出てきます。
そこで、さらにケース面接を行う場合もあれば、志望者のパーソナリティを聞くような通常の人物面接が行われることもありますが、最終的にその企業のカルチャーとフィットしていると評価された志望者に内定を出すというのが一般的な選考の流れです。
インターンで内定が決まる学生も
RIO氏:このほか、インターンシップを通じた採用のパターンもあります。その場合は、1~2回のケース面接を行い、合格した人が「ジョブ」と呼ばれる数日間のインターンに参加します。
このインターンでは、「ある会社の新規事業を立案せよ」とか「ある会社のM&Aの戦略を検討せよ」という課題に取り組むことになります。
他のインターン参加者と協力しながら調査分析や資料作成に取り組み、最終日にはパートナーを前にプレゼンテーションを行います。
課題の合間には、コンサルティングファームの代表から話があったり、各部署の説明が行われたりもします。
インターンの当日あるいは後日、ジョブで高評価を得た人は人事部やパートナーとの面接に呼ばれ、一部の方に内定が出されます。
コンサルティング業界の採用人数は増えている
――外資系コンサルの選考と聞くと、非常に難易度の高い、厳しい面接というイメージもありますが、実際のところどうなのでしょうか。
RIO氏:初めてフェルミ推定やケース面接の問題を目にすると、難しく感じるかもしれません。ですが、問題を繰り返し練習すれば、誰でも「回答の型」を身につけることができます。
これはコンサルタントの仕事に必要な「問題解決思考の型」「ロジカルシンキングの型」でもあります。
コンサルティングファームの選考では、必ずフェルミ推定やケース面接が実施されるので、対策を立てやすいという面もあります。事前に対策を立てることで、選考突破の可能性を大きく伸ばすことができます。
私は10年以上この業界で働いているのですが、私が就職した時と比べると、コンサルティングファームの採用人数は圧倒的に増えています。
いわゆる総合コンサルを中心に、以前は十数名しか採用しなかった企業が、数百名以上採用するようになっており、このこともコンサルティング業界への就職を希望する学生が増えている大きな要因だと思います。