現代人は「慢性的で容赦ないストレス」に押しつぶされ、頭も肉体も、そしてメンタルも疲れ切っている。私たち人間が本来持つ「エネルギー」を取り戻すには、どうすればよいのだろうか? 本連載では、スタンフォード大学で人気講義を担当し、億万長者の投資家、シリコンバレーの起業家、アカデミー賞俳優のコンシェルジュドクターでもあるモリー・マルーフの著書『脳と身体を最適化せよ!──「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』から人生最高の時期を引き延ばし、生活の質を最大限に高め、幸福度を増し、慢性疾患の発症リスクを下げる「最新の健康法」を紹介する。

【医者が教える】糖質制限ダイエットが「女性に効きにくい」理由Photo: Adobe Stock

「同じ食事を続ける」よりも「周期性」を意識する

 一般に、女性は自らの健康状態に非常に敏感であり、時間や費用もかけている。

 一方、バイオハックに関する人気書籍の大半は男性が書いたもので、バイオハック用の流行りのハイテクツールや手法もほとんどが男性によってつくられたものだ。

 つまり、その大部分が、女性ではなく男性の身体に効果があるように設計されている。

 さらに言うと、一般的な医療研究も、いまだに男性の被験者群を中心に実施されており、その研究結果は必ずしも女性に当てはまらない。女性はその周期性ゆえに、男性よりも研究が難しく費用もかかる。

 しかし、この周期性こそが、男性のバイオハックの方法が必ずしも女性に効くわけではない理由だ

 男性と女性とではホルモンや生理学上の違いがあり、さらに重要なことに、進化の観点から生物学的要件が異なる。妊娠や子育てという大仕事のためにつくられた身体は、狩猟や戦闘という大仕事のためにつくられた身体とはニーズが大きく異なるのだ。

 栄養科学者で運動生理学者のステイシー・シムズはこう述べている。

「あなたは小さな男性ではない。男性のように食べたりトレーニングしたりするのはやめよう」

 ケトジェニックダイエット(ケトン食)は、男性中心のバイオハックが女性にあまり効かない良い例だ。

 高脂肪・低炭水化物の食事法であるケトジェニックダイエットは、数ヵ月間は効果があるものの、やがて具合が悪くなったり体重の増加につながったりすることに、多くの女性が気づいている。

 ケトジェニックダイエットで健康を保っている女性もいるが、継続的なケトジェニックダイエットによって最終的に体調を崩している女性は多い

 糖の代わりに脂肪を燃やす「ケトーシス状態」になるのが悪いわけではない。ただ単に女性は、特に妊娠可能年齢の間は、男性よりも多く炭水化物を必要とし、月経周期に合わせた「カーボサイクリング」(低炭水化物食と高炭水化物食の時期を交互に切り替える食事法)と呼ばれる周期的なケトーシスに対して、よりうまく反応する。運動能力の高い女性は特にそうだ。

 月経周期は4週間にわたって女性のエネルギーを劇的に変化させる。つまり周期のどこにいるかによって、体内での食べ物の処理も、身体的パフォーマンスも、ストレスへの反応も変わってくる。

 1週間のケトジェニックダイエットはあなたに必要かもしれない。だが、次の週まで続ける必要はあまりないだろう。

 女性のバイオロジーの周期性は、一般に、周期的な食事法や周期的な運動とのほうが相性がいい

(本記事は『脳と身体を最適化せよ!──「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』から一部を抜粋・改変したものです。)