子どもの頃に「おとなしい」と言われて嫌な思いをした方は多いのではないでしょうか。言っているほうは悪気はなくても、「おとなしい」という言葉にはどこか否定的な響きがあります。「内向的」という意味合いが込められている場合が多いからです。「外向的」な性格で悩んでいる人には会ったことがありませんが、「内向的」であることはよくないことと世間では受け止められてきました。しかし「内向的」な性格にも長所はたくさんあるのです。世界の大富豪イーロン・マスク、「ハリー・ポッター」シリーズの生みの親JK・ローリング、アップル共同創業者のスティーブ・ジョブズなど、世界の偉人とも言われる多くの成功者は、子どもの頃に内向的な性格でした。一人で深く思考を重ねるのが好きでした。だからいじめの対象になることも少なくありませんでした。しかし彼らは、ある時点で自分を成長させ、自分の良さを保ったまま、世に出ることができたのです。本連載では、最新の脳科学研究から明らかになった、「おとなしさの真実」とさまざまな「性格をリセットして成長させる方法」をお伝えします。
「生まれ」と「育ち」の真実
「性格は生まれつき遺伝で決まっていて変わらない」
そのように思っている人が多いようです。
しかし、私たちのパーソナリティは大きく2つの要素からなっています。
それが「気質」と「性格」の2つの部分です。
「気質」とは、遺伝子によって生まれたときから決まっている先天的なパーソナリティです。イライラしやすい、喜びを感じやすい、新しいことに興味を持ちやすい、人が好きなど、これらは生まれつきドーパミンやセロトニンなど脳内の神経伝達物質の量によってある程度決まっています。
「性格」(キャラクター)とは、生まれてからの後天的な体験や出来事によってつくられるパーソナリティです。
遺伝子が同じ一卵性双生児の研究でも、大人になるにつれて性格や好みが異なってくる現象があります。これはまさに後天的な体験や環境の違いで、後天的に性格がつくられているからです。行動遺伝学の研究でも、私たちのパーソナリティは全体の約40~50%が遺伝的な影響であることが示されています。
米国ワシントン大学セントルイスのロバート・クロニンジャー博士は、この「気質」と「性格」の2つの要素が私たちのパーソナリティの不可欠な要素であることを提唱しており、「TCI理論」(Temperament and Character Inventory)として世界の数多くの研究者に支持されています。
先天的な「気質」は遺伝子で決まっていて変えることができません。しかし、後天的な「性格」はいくらでも成長させることができるのです。
※本記事は『「おとなしい人」の完全成功マニュアル 内向型の強みを活かして人生を切り拓く方法』西剛志(ダイヤモンド社)より抜粋したものです。