子どもの頃に「おとなしい」と言われて嫌な思いをした方は多いのではないでしょうか。言っているほうは悪気はなくても、「おとなしい」という言葉にはどこか否定的な響きがあります。「内向的」という意味合いが込められている場合が多いからです。「外向的」な性格で悩んでいる人には会ったことがありませんが、「内向的」であることはよくないことと世間では受け止められてきました。しかし「内向的」な性格にも長所はたくさんあるのです。世界の大富豪イーロン・マスク、「ハリー・ポッター」シリーズの生みの親JK・ローリング、アップル共同創業者のスティーブ・ジョブズなど、世界の偉人とも言われる多くの成功者は、子どもの頃に内向的な性格でした。一人で深く思考を重ねるのが好きでした。だからいじめの対象になることも少なくありませんでした。しかし彼らは、ある時点で自分を成長させ、自分の良さを保ったまま、世に出ることができたのです。本連載では、最新の脳科学研究から明らかになった、「おとなしさの真実」とさまざまな「性格をリセットして成長させる方法」をお伝えします(本記事は『「おとなしい人」の完全成功マニュアル 内向型の強みを活かして人生を切り拓く方法』西剛志(ダイヤモンド社)より抜粋したものです)。
付き合っている人はあなたの一部になっている
世の中には運のいい人がいますが、運がいい人と一緒にいると、なぜか自分まで運がよくなった感覚がすることはなかったでしょうか。
気のせいといったらそれまでですが、これは成功している人のうまくいく考えにふれると、私たちのこれまでの価値観が消去学習によってリセットされるという現象の一つです。ハーバード大学の研究でも幸せは伝染することがわかっていますが、私たちは付き合う人から多分に影響を受けているのです。
気をつけなければいけないのは、この学習はプラスだけでなく、マイナスにも働くということです。 ちなみに、これは脳科学の世界では「集団バイアス」という言葉になります。これは所属する集団によって自分の思考パターンが影響を受けてしまうという現象です。
通常は人が倒れていたら一般的な人は助けようとしますが、もし周りの人がそれにあまり関心なくただ見ているだけだとしたら、自分も同じように助けようとしなくなることがわかっています。
米国の研究でも、投資の世界でリスクを好む人が、保守的な人たちのグループに入ると、リスクの少ない投資をするようになったり、保守的な人がリスクを好む集団にいるとリスクの高い投資を好むようになったりするという報告があります。
たとえ言葉を発していなくてもストレスを感じている人を見ると、自分も同じような感情(神経症傾向)になる人も多いそうです。
これまでバイアスによる思考パターンの変化は一時的なものだと思われてきました。しかし、これが日々繰り返されると習慣化されて性格の一部になってしまうのです。
動物ですら性格が変わる
性格は人間だけでなく動物も接する人によって影響を受けます。
リンカーン大学とノッティンガム・トレント大学の2019年の研究では、イギリス在住の3000人以上の猫の飼い主をリサーチしました。
その結果、神経症傾向の強い飼い主に育てられた猫は問題行動を起こすことが多く、誠実性が高く良心的な飼い主のもとで育った猫は消去学習によって不安や攻撃的な行動を見せなかったそうです。犬でも同様の結果が出ています。
私自身も犬を飼っていますが、外向性が高い飼い主は外からの刺激が好きなため、犬が興奮したとき思わず喜び盛り上がってしまいます。そのため、犬もこれはよいことなんだと(快感)学習して、より興奮しやすい犬になってしまうのでしょう。
一方、内向性が高い飼い主は、犬が興奮してもそれほど反応しません。そのため、「興奮=ニュートラル」となるため快感学習が起こらず、犬も必要以上に興奮しない落ち着いた犬になると考えられます。
よくビジネスの世界でも、自分の収入を上げたければ、収入の高い人たちと付き合えと言われますが、これらはあながち嘘ではないことが科学的にも確かめられてきています。昔から学習効率が最もよい方法は、「師をつくること」と言われており、古来から師弟制度のようなものがありました。これらは脳科学的にも消去学習として、とても効率のよい学習法です。
あなたが付き合う人は、あなたの一部になっています。もちろん、それだけで全ての性格が変わる訳ではありませんが、確実に性格の質はシフトしていきます。もし自分を変えたければ、自分に力を与えてくれる人と付き合うことで消去学習をすることが大切です。
「私は周りに付き合いたい人なんていない!」という人もいますが、その場合は、尊敬する人や憧れている人の動画を見るだけでも消去学習が起きることがあります。
悩んでいたときに大きな困難を乗り越えて大活躍している人の動画を見たら気分が変わったり、悩みがどうでもよくなることがありますが、この理由の一つは消去学習が起きているからです。普段接しているものに、私たちは近づいていくのです。
※本記事は『「おとなしい人」の完全成功マニュアル 内向型の強みを活かして人生を切り拓く方法』西剛志(ダイヤモンド社)より抜粋したものです。