子どもの頃に「おとなしい」と言われて嫌な思いをした方は多いのではないでしょうか。言っているほうは悪気はなくても、「おとなしい」という言葉にはどこか否定的な響きがあります。「内向的」という意味合いが込められている場合が多いからです。「外向的」な性格で悩んでいる人には会ったことがありませんが、「内向的」であることはよくないことと世間では受け止められてきました。しかし「内向的」な性格にも長所はたくさんあるのです。世界の大富豪イーロン・マスク、「ハリー・ポッター」シリーズの生みの親JK・ローリング、アップル共同創業者のスティーブ・ジョブズなど、世界の偉人とも言われる多くの成功者は、子どもの頃に内向的な性格でした。一人で深く思考を重ねるのが好きでした。だからいじめの対象になることも少なくありませんでした。しかし彼らは、ある時点で自分を成長させ、自分の良さを保ったまま、世に出ることができたのです。本連載では、最新の脳科学研究から明らかになった、「おとなしさの真実」とさまざまな「性格をリセットして成長させる方法」をお伝えします(本記事は『「おとなしい人」の完全成功マニュアル 内向型の強みを活かして人生を切り拓く方法』西剛志(ダイヤモンド社)より抜粋したものです)。

【性格をリセットする方法(2)】「住む場所」を変えれば、性格はリセットできるPhoto: Adobe Stock

自然環境が脳にも影響する

 私たちの性格は「住んでいる土地の自然環境」に影響を受けます。

 有名なのが、住んでいる土地の気候や温度によって性格が変化するというものです。2017年のリサーチでも、22℃前後の快適な環境で育った人は、神経症傾向が減る傾向があるようです。極めて寒い場所や灼熱の砂漠などで暮らす人たちは、生きるために常にリスクを考えなければなりません。そのため、マイナスにフォーカスする神経症傾向を高めていると言われています。

 これは、住んでいる環境によって性格がリセットされて新しいパターンが生まれることを意味しています。

 また寒すぎる場所は、年間を通しての日光の照射量も少ないため、リラックスのホルモンとも呼ばれる脳内のセロトニンが分泌されにくくなり、神経症傾向をより高めているとも言われています。

 ハワイに行くとなぜかリラックスして穏やかな気持ちになりますが、これは湿度も低く温度も快適な穏やかなハワイの気候が、神経症傾向をリセットしているのかもしれません。神経症傾向を弱めたければ、まずは環境を変えてみるというのが一つの方法です。

移動距離が人の成長に比例する

 性格は「付き合う人」と「住む環境」に影響を受けます。そういった意味で、性格が最も大きく成長できるのは、「距離的に離れた異なる価値観を持つ人が住む地域」を訪れることです。

 仕事でも旅行でもイベントでも、今までに行ったことのない場所に行くと、これまで悩んでいたことが小さく感じられたり、些細なことに思えたりすることはなかったでしょうか。

 私たちは、いつもと同じ場所にいると脳が学習を終えてしまうため、「慣れ」という状態が起こります。この状態だと新しい刺激がないため、成長は起こりません。

 しかしこれまで行ったこともないような場所に行くと、考え方が変わったり、価値観がシフトしたりして、生き方が変わるということがよくあります。これがまさに消去学習という体験の一つなのです。

 実際に、ドイツのフリードリヒ・シラー大学の研究では、「留学すると性格が大きくシフトする」ということが示されています。1学期だけ、もしくは1年留学した学生は神経症傾向が下がり、協調性だけでなく新しいことにチャレンジする傾向が明らかに高まることまでわかりました。

 すでに留学前に数値の高かった性格(「外向性」「開放性」「誠実性」)についても、留学後に大きく成長していました。

 私の知人にも「内向的な自分を変えたい」と思い、海外に留学した人がいますが、実際に大きく性格が変わりました。

 外国にいると、恥ずかしさよりも、とにかく言葉を話すことに一生懸命になっている自分がいます。「どう言えばいいんだろう?」と言葉を真剣に考えるうちに、「自分はどう見られてるんだろう?」という思考は薄れ、そのおかげで、これまで見えなかった他の部分、人の温かさにも気づくことができるようになったそうです。まさに消去学習です。

 日本に戻っても彼は社交的なままで、実際に会うと昔と違っていて驚くことがあります。これが本来の彼の性格だったのかもしれません。全く知らない土地で、快感を伴う新しい体験をして、痛みの性格がリセットされ、本来の自分を取り戻せたのです。

※本記事は『「おとなしい人」の完全成功マニュアル 内向型の強みを活かして人生を切り拓く方法』西剛志(ダイヤモンド社)より抜粋したものです。