子どもの頃に「おとなしい」と言われて嫌な思いをした方は多いのではないでしょうか。言っているほうは悪気はなくても、「おとなしい」という言葉にはどこか否定的な響きがあります。「内向的」という意味合いが込められている場合が多いからです。「外向的」な性格で悩んでいる人には会ったことがありませんが、「内向的」であることはよくないことと世間では受け止められてきました。しかし「内向的」な性格にも長所はたくさんあるのです。世界の大富豪イーロン・マスク、「ハリー・ポッター」シリーズの生みの親JK・ローリング、アップル共同創業者のスティーブ・ジョブズなど、世界の偉人とも言われる多くの成功者は、子どもの頃に内向的な性格でした。一人で深く思考を重ねるのが好きでした。だからいじめの対象になることも少なくありませんでした。しかし彼らは、ある時点で自分を成長させ、自分の良さを保ったまま、世に出ることができたのです。本連載では、最新の脳科学研究から明らかになった、「おとなしさの真実」とさまざまな「性格をリセットして成長させる方法」をお伝えします(本記事は『「おとなしい人」の完全成功マニュアル 内向型の強みを活かして人生を切り拓く方法』西剛志(ダイヤモンド社)より抜粋したものです)。

マイナス思考はあなたのせいじゃない。育ってきた環境に原因があるPhoto: Adobe Stock

内気な人の「負の遺産」が多くなる本当のワケ

 恐怖学習しやすく痛みが大きい人は、決して自分のせいではありません。特に大切なのは幼少期の親との環境です。

 なぜなら、小さい子どもというのは、もともと神経症傾向の一つである「ネガティビティ・バイアス」が強くなるようにできていて、恐怖学習をしやすいからです。

 幼児は、親がいなくなったら生きていくことができません。ですから、子どもは自分を守るために、親から離れるとすぐに泣きます。そして、怖がりです。危険を顧みずに未知の大きな動物に向かっていったら、死んでしまうかもしれません。だからこそ、子どもは「ネガティビティ・バイアス」を大人よりも働かせるのですが、その代わり、恐怖学習もしやすいと言えます。

 特に内向性が高い子ほど、深く考える傾向があるため、より怖さを感じてしまうようです。私も7歳の子どもがいますが、周りの友達を見ていると、怖いことがあってもすぐに忘れてしまう子もいれば、ずっとひきずって泣いている子もいます。

 子どもは内向性が高いと、恐怖学習の頻度が増えていき、苦手意識が多い人に育ってしまいやすいのです。マイナスな思考がいきすぎると、扁桃体が過活動になって前頭前野の活動低下が起こるため、より客観的な思考ができず、落ち込みやすくなってしまいます。

 しかし、この内向性が高くても、恐怖学習をしにくいケースがあります。それが「周りの人とつながっていて安心感を感じているとき」です。

 これはもともとラットで発見された現象です。生まれたばかりのラットは、普段いる場所から隔離されると、「助け」を求めてわめきます。かなりのストレス。まさに恐怖体験です。

 そのとき、母親や兄弟姉妹がそばにいると、ラットは安心して暴れなくなります。リラックスして、恐怖体験が弱まるのです。これを「社会的緩衝作用」と呼ぶのですが、人でも同じで、サルやニワトリ、ヒツジ、ブタやあらゆる動物で観察される普遍的な現象です。

 私たちは小さい頃、内向型の気質を持っていると恐怖体験をしやすいですが、そばに親や兄弟のような安心できる存在がいると、「社会的緩衝作用」で恐怖の記憶が消去されていきます。その結果、内向型であったとしても、苦手意識が少なく自信のある子に育つのです。

 一方で小さい頃に安心感がない環境で育つと、「社会的緩衝作用」が働きません。特に内向性が強いと恐怖学習が増えてしまいます。子どもの頃に体験した恐怖学習は、大人になっても知らないところで作用していることがあります。

 なぜか、特定の場面だけ緊張したり、不安になったりするようなことがあるとしたら、それは幼少期のときの恐怖学習が影響している可能性があるのです。

 マイナス思考というのは、決してあなたのせいではありません。育ってきた環境が強く影響している可能性があるのです。

※本記事は『「おとなしい人」の完全成功マニュアル 内向型の強みを活かして人生を切り拓く方法』西剛志(ダイヤモンド社)より抜粋したものです。