子どもの頃に「おとなしい」と言われて嫌な思いをした方は多いのではないでしょうか。言っているほうは悪気はなくても、「おとなしい」という言葉にはどこか否定的な響きがあります。「内向的」という意味合いが込められている場合が多いからです。「外向的」な性格で悩んでいる人には会ったことがありませんが、「内向的」であることはよくないことと世間では受け止められてきました。しかし「内向的」な性格にも長所はたくさんあるのです。世界の大富豪イーロン・マスク、「ハリー・ポッター」シリーズの生みの親JK・ローリング、アップル共同創業者のスティーブ・ジョブズなど、世界の偉人とも言われる多くの成功者は、子どもの頃に内向的な性格でした。一人で深く思考を重ねるのが好きでした。だからいじめの対象になることも少なくありませんでした。しかし彼らは、ある時点で自分を成長させ、自分の良さを保ったまま、世に出ることができたのです。本連載では、最新の脳科学研究から明らかになった、「おとなしさの真実」とさまざまな「性格をリセットして成長させる方法」をお伝えします(本記事は『「おとなしい人」の完全成功マニュアル 内向型の強みを活かして人生を切り拓く方法』西剛志(ダイヤモンド社)より抜粋したものです)。
たった1分で心のモヤモヤが消える!
たった1分で後天的な記憶がリセットできる画期的な方法を紹介します。 私がこれまで15年かけて開発した「ゾーン体操TM」です。
これは、マイナスな感情を改善する目の動きを使った「EMDR」(Eye movement desensitization and reprocessing)という方法をベースに、より簡単で、日常生活に取り入れやすいように、私がアレンジした新しい方法です。
少し難しい言葉にはなりますが、正式には「眼球運動による脱感作&リプロセシング」と呼ばれます。簡単に言うと、脳のパターンをリセットして、新しいプロセスを作っていく手法です。2021年に行われた373名を対象とした7つのリサーチのメタ分析でも、科学的に優位な効果があることが示されています。
「ゾーン体操TM」のプロセスを行うと、後天的に身についた性格のパターンが次々とリセットされていきます。
私はこれまで、2000名以上の人たちに提供してきましたが、多くの人が効果を実感している方法です。
目は「心の窓」とも言われており、自分の感情の状態によって目線が動くことが昔から知られていました。
近年では、ストレスを考えながら目を動かすだけで、意味記憶や心の理論を司る側頭極と中前頭回の連携が増えるため、マイナス思考を高いレベルでコントロールできるようになることもわかってきています。
神経症傾向などの性格特性を下げる方法として、いま世界で最も信頼性が高く注目されている手法です。
ゾーン体操TMの4つのステップ
「ゾーン体操TM」のやり方は、簡単です。
前準備:変えたい性格を特定し、10点満点で点数化する
まずは、性格のうち、どんなものをリセットしたいか考え、一つに決めてください。
次に示すのはあくまでも事例です。ご自身がシフトさせたい性格を考えてみてください。
【シフトさせたい性格(パターン)の事例】
・人の目を気にしすぎる
・話そうと思うと緊張する
・自分がどう見られているか不安だ
・まじめにやらなければならない(責任が重い)
・人に合わせなければならない/嫌われるのが怖い
一度の「ゾーン体操TM」でシフトできるのは、一つの性格(もしくは、性格を生み出している苦手意識/思考パターン)です。まずは、一番シフトさせたいと思うものを決めてみてください。
ポイントは、「人に話しかけられるようになりたい」と、理想のすがたを言葉にするのではなく、「人に話しかけるのが怖い」と、問題となっている性格やパターンを言葉にすることです。
また、そのリセットしたい性格について、あなたはどのくらいの痛みを感じるでしょうか。「人に話しかけるのが怖い」というつらさは、どの程度の大きさでしょう。人に話しかけることが「全く怖くない」状態が0点だとしたら、10点満点で何点くらいでしょうか。何となくこのくらいかなというもので大丈夫ですので、点数をつけてみてください。
ステップ1:立った状態で、利き手をまっすぐ伸ばし、親指を立てて前に差し出す
リセットしたい性格が決まったら、体操をはじめます。
立ち上がって、片腕をぐっと目の前に、水平に伸ばしてください。
まっすぐに伸ばした手の親指を立ち上げます。いわゆる「いいね」や「サムズアップ」のポーズです。
ステップ2:まっすぐ伸ばした親指を見つめ、リセットしたい性格を口にしながら、腕を2回ゆっくりと大きく回す(この間、顔は動かさず目線だけでずっと親指を追う。その間、直したい性格を口にし続ける)
立ち上げた親指をじっと見つめ、意識を集中し、リセットしたい性格を口に出してください。さきほどの例で言えば、「人に話しかけるのが怖い」と、リセットしたい性格を声に出して言いながら、腕をまっすぐ伸ばし、ゆっくりと大きく2回まわします(右回りでも左回りでもかまいません)。
個人差はありますが、早すぎても効果はありませんので、目安としては1回転につき5~10秒かけてしっくりくる速さで回します。その間、顔は動かさず、目で親指を追いながら回してください。
ステップ3:2回転したら、今度は反対に腕を大きく2回動かす。その間、直したい性格を口にし続けながら、ずっと親指の動きを追う
ステップ2と同様に、リセットしたい性格を復唱しながら腕を反対にゆっくりと動かします。
このときも、顔は動かさず、目線だけで親指の動きを追っていきます。
ステップ4:親指を顔の目の前に持ってきて、最後に、腕をぐっと前に伸ばしてグッドポーズ
リセットしたい性格を声に出し続け、親指を自分の目線の前(5~10センチほどの距離)に持っていきます。
そして、親指を見続けながら、そのまま腕を前にスーッとゆっくり伸ばし、最終的に「グッド」の決めポーズをします。心の中で「グッド!」という声が思わず出てくる人もいます。
いずれにしても、最後はグッドの決めポーズで終わりです(わかりづらい場合は、QRコードの動画を参照ください)。
変化の確認:ステップ1の前につけた点数が何点になっているか、再度10点満点で点数化する
気持ちがどのくらい変化したか、同様に点数をつけてみてください。すると、「人目を気にしてしまう」というのが最初10点だった人が、8点になったり、5点になったり、2~1点になる人もいます。変化は人それぞれです。
1点でも変化したら、それはすごいことです。たった1点と思われるかもしれませんが、この1点を下げるために、日常生活を送っているだけでは、数ヶ月~数年かかることもあります。そんな変化が、この一瞬で起きるのです。
点数が下がった原因は、消去学習が起きたからだと考えられます。つまり、「人目」=「大きな痛み」だった記憶が、「人目」=「中程度の痛み」~「小さな痛み」「痛みも感じない」というレベルに、脳のパターンがリセットされたのです。
これまで15年ほど、クライアントをモニターしていますが、今回の手法を利用した本格的な方法で性格のリセットを行うと、たった1回の体験で、その後10年以上も効果が維持されています。
通常、消去学習は自分で物理的に新しい体験をしなければなりません。しかし、この「ゾーン体操TM」を利用すると、新しい体験をしなくても、短時間で消去学習を行ったのと同じ効果が得られます。
イラスト/SHIMA
※本記事は『「おとなしい人」の完全成功マニュアル 内向型の強みを活かして人生を切り拓く方法』西剛志(ダイヤモンド社)より抜粋したものです。