ますます過熱する中学受験。子どもを本当に伸ばしてくれる志望校の見極め方や選び方、その志望校に合格するための効果的な「過去問対策」をやり方を、大人気プロ家庭教師の安浪京子先生が詳細に説明した『中学受験 大逆転の志望校選びと過去問対策 令和最新版』が発売に。本書より抜粋して、そのノウハウの一部をご紹介する。
私立中学が公立中学と決定的に異なる点とは?
ここまで、主に学力での志望校選びの基準をお話ししてきました。しかしもちろんそれだけではありません。
選択肢の多い私立中学の中から学校を選ぶ際、何から考えれば良いのかわからない―という方が多いと思いますが、私立中学が公立中学と決定的に異なる点が2つあります。
1点目は「私立には文化がある」ということです。これは「校風」と言い換えることもできます。
文化は長い時間をかけてつくられるものですが、国公立の中学・高校は学校のトップである校長をはじめ、諸先生方は公務員であり、数年で異動となります。そのため、私立ほどの文化が根付きにくいのは否めません。
一方、私立は良くも悪くも何十年と先生が変わらないため、文化が形成されていきます。
2点目は「共学校」の他に「男子校」「女子校」「大学附属校」が存在する、ということです。この4カテゴリーは学校のタイプが全く異なり、思考や行動様式にも少なからず影響を与えます。
「孟母三遷」という言葉をご存じでしょうか。墓場のそばに住んでいたために葬式のまねばかりしていた孟子を見かね、母親が市場の近くに引っ越しました。すると、孟子が商人の駆け引きをまねるので、今度は学校のそばに引っ越しました。すると礼儀作法をまねるようになり、こここそ教育に最適だとしてその場所に落ち着いたという「子どもは周囲の影響を受けやすいので、教育には環境が大切である」という故事です。
志望校選びの参考になる「マトリクス」を作成!
お子さんは、男子校、女子校、共学校などのカテゴリー別に、この「文化」という環境の中で6年間を過ごすことになります。直接、学園祭や学校説明会に足を運んで、それを体感できればいいのですが、足を運べる学校数には限界がありますよね。
そこで、この「文化」を、一定の軸をもうけてマトリクスにしました。それが本書の冒頭に掲載している「校風マトリクス」です。
これはあらゆる学校に精通していないと作成できませんが、私立中高一貫校情報誌「SCHOOL」の吉田玲唲編集長はじめ、長年にわたり中学受験業界に携わってきた諸先生方のご協力のもとに「令和最新版」が完成しました。
初めてこのマトリクスを作成して世に出したのは2018年。それから6年以上経つ中で、コロナ禍があり、管理職の異動や学校改革・リニューアルなどもありました。今回最新版を作るにあたり、より良く成長している学校、変化のない学校、勢いの衰えてきた学校など違いが如実で、まさに、「学校は生き物である」ことを改めて実感しました。
校風に影響する2つの「軸」とは?
学校によって文化は様々ですが、多感な第二次性徴期において重要であろう「秩序を重んじるか、自主性を重んじるか」の軸と、「革新度」の軸を設定。「男子校」「女子校」「共学校」「大学附属校」の4カテゴリー別にマトリクスを作成しました(大学附属校に関しては、一部の学校は、「男子校」「女子校」カテゴリーに振り分けているものもあります)。
「麻布も女子学院(ともに東京都)も非常に自由」とはよく言われますが、男子校と女子校では自由の質や幅が異なり、同列に比べることはできません。ですので、あくまでそれぞれのカテゴリーの中での相対評価となっています。
基本的には、
・横軸 「学校が勉強や生活面の秩序を保つ」⇔「秩序にそれほど介入せず生徒に任せる」
・縦軸 学校として様々な形態の教育機会を取り入れたり、個や集団の育成のためにチャレンジや体験の場を積極的に用意している
となっています。
ただ、同じゾーンにプロットされているからといって、それらの学校が似ているわけではありません。学校によって「秩序」「自主性」の定義も「革新度」の意味合いも異なります。
自分の子どもに最適な学校を探すために
このマトリクスは、“どちらに寄っているほうが良い”というものではありません。
自主性に任せる方が伸びる子・どこまでも緩み切ってしまう子、管理されることによってコツコツ頑張れる子・反発してやる気をなくす子、色々なことに興味を持つ子・萎縮する子……、本当に様々です。
ぜひ、本書の校風マトリクスも参考に、学校の校風を「秩序重視」⇔「自主性重視」、「革新度」という2つの軸で考えてみて、我が子の性格に合った学校を選んでいただければと思います。
*本記事は、『中学受験 大逆転の志望校選びと過去問対策 令和最新版』(安浪京子著・ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集して作成したものです。