ますます過熱する中学受験。子どもを本当に伸ばしてくれる志望校の見極め方や選び方、その志望校に合格するための効果的な「過去問対策」をやり方を、大人気プロ家庭教師の安浪京子先生が詳細に説明した『中学受験 大逆転の志望校選びと過去問対策 令和最新版』が発売に。本書より抜粋して、そのノウハウの一部をご紹介する。

【カリスマ家庭教師が伝える】中学受験は多様化しているのに「不安に煽られる人」が増える理由Photo: Adobe Stock

不安を煽られて過熱化が進む構造に

 中学受験の過熱化は、年々拍車がかかっています。同時に、中学受験が多様化してきたのをひしひしと感じます。
 実際、ここ数年の入試では中堅校に人気が集まっています。これは、
「身の丈に合わない勉強をして最難関を目指さなくてもよい」
「偏差値にとらわれず、我が子の良さが光る学校にご縁があればよい」

 と考えるご家庭が増えてきたからとも言えます。

 しかし、世の中は少子化です。これは教育産業においては死活問題であり、塾も私学も生徒確保に躍起になります。

 生徒を確保するために、塾や学校が魅力を磨く方向に進めば良いのですが、皆が皆、そうとは限りません。
 教育は、不安を煽れば煽るほど過熱します。中学受験が多様化する流れと逆行するように、テストや偏差値、カリキュラムなどで、生徒やご家庭が不安に煽られる構造にも拍車がかかってきています。

 私は中学受験専門の算数プロ家庭教師として、日々小学生たちの指導に当たっています。また、中学受験カウンセラーとして、たくさんのご家族から相談を受けたり、中学受験セミナーで色々なお話をさせていただいています。

 そんな中、「偏差値至上主義でない中学受験」「我が子が幸せになる中学受験」を望んでいるのに、中学受験のシステムにからめとられて身動きが取れず、悩まれている方がかえって増えていることを痛感しています。

「志望校選び」の重要性

 本書は2018年に文藝春秋から出した「中学受験 大逆転の志望校選び」をベースに、大幅に加筆しアップデートしたものです。内容は「志望校選び」と「志望校対策」の2本柱から構成されています。

 志望校を校風で選べる“日本初の「校風マトリクス」”を世に出してから6年。その間に、コロナ禍による一斉休校、休塾がありました。「教育を止めてはいけない」と動き続けた学校、「時が解決してくれるだろう。何とかなるだろう」と行動を起こそうとしなかった学校……。決定的な価値観の差が浮き彫りになりました。今回、本書に掲載するために「校風マトリクス」を私立中高一貫情報誌「SCHOOL」の吉田玲唲編集長とアップデートするにあたり、「これほど学校の位置づけに変化があるとは……」と感慨深く、学校は「生き物」であることを実感しました。

 中学受験は通過点であり、志望校はゴールではない――。誰しもが“頭では”わかっているその事実に加え、“学校は絶対的な場ではなく、生ものである”という点を、より具体的にお伝えできたらと筆を執ったのが、本書のSTEP1の「志望校選び篇(第1章、第2章)」になります。

「志望校対策」の取り組み方がわかっていない人が多い

 志望校が決まったら、そこに合格するための勉強(志望校対策)が必要になります。私はオンライン相談会やVoicyなどで日々皆さんの相談に回答していますが、6年生の夏頃から一気に増えるのが「過去問で点数が取れない」という悩みです。 

 しかし、実際に相談内容を読んだり、お子さんが解いた過去問を見たりすると、過去問そのものの使い方や取り組み方がわかっていないだけという、本当にもったいない事例がたくさんあります。

 STEP2の「志望校対策篇(第3章~第6章)」は、そんなプロの観点から見た過去問対策の方法や、志望校の過去問との相性が客観的にわかる「算数マトリクス」「国語マトリクス」などをリニューアル&アップデートして載せています。普段セミナーなどでお話しすることをさらに掘り下げ、他には例を見ないほどの充実の内容となっています。

 本書や本連載が、受験を控えたお子さん、そしてサポートされる親御さんたちにとって、自信を持って志望校に歩み寄っていく一助となれば、これほど嬉しいことはありません。

*本記事は、『中学受験 大逆転の志望校選びと過去問対策 令和最新版』(安浪京子著・ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集して作成したものです。