変化が激しく先行き不透明の時代には、私たち一人ひとりの働き方にもバージョンアップが求められる。必要なのは、答えのない時代に素早く成果を出す仕事のやり方。それがアジャイル仕事術である。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社)は、経営共創基盤グループ会長 冨山和彦氏、『地頭力を鍛える』著者 細谷 功氏の2人がW推薦する注目の書。著者は、経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)でIGPIシンガポール取締役CEOを務める坂田幸樹氏。業界という壁がこわれ、ルーチン業務が減り、プロジェクト単位の仕事が圧倒的に増えていくこれからの時代。組織に依存するのではなく、私たち一人ひとりが自立(自律)した真のプロフェッショナルになることが求められる。本連載の特別編として書下ろしの記事をお届けする。
リモートワーク実施率の低下
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2020年以降、多くの企業がリモートワークを導入しました。リモートワークは、通勤時間の削減や柔軟な働き方を可能にするなど、多くの利点があります。そして、オンライン会議が主流となったことで、様々な業務のデジタル化が進んだことは、大きな進歩といえます。
しかし、最近ではリモートワークから従来の出社形態に戻る企業が増えています。東京都によるテレワーク実施率調査によると、都内企業(従業員30人以上)のリモートワーク実施率および実際にテレワークを活用した社員の割合は、緊急事態宣言の期間をピークに下降傾向にあります。
この現象には様々な理由があると推測されますが、その一つに多くの管理職がリモートワークによる生産性の低下を懸念している点を反映しているといえるでしょう。
しかし、この懸念は本当に正当なものでしょうか?
管理職が見落としているリモートワークの重要性
多くの管理職がリモートワークに対して懐疑的である理由の一つに、チームでのコミュニケーションやアイデアの共有が難しいと感じている点が挙げられます。確かに、対面でのコミュニケーションはスムーズであり、対面での議論は新たなアイデアを生むために有効です。
しかし、リモートワークの環境下でこそ、個々の社員が集中して深く考えることができる時間が確保されるという見方もあります。
クリエイティブな仕事や問題解決には、フロー状態に入ることが重要です。フロー状態とは、時間を忘れて没頭できる状態を指し、高い集中力を発揮するために必要な条件です。オフィスの雑音や不要な中断が少ないリモートワーク環境は、まさにこのフロー状態を実現するのに最適です。
社員一人ひとりが持つ潜在的な能力を引き出すための環境づくりの一手段として、リモートワークが有効である点を管理職は理解すべきです。
リモートワークと出社のバランスを追求する
チームワークと個々の集中作業を両立するためには、リモートワークと出社のバランスをうまく取ることが求められます。
その際、リモートワークに対する不安を解消するために、タスク管理や進捗確認の仕組みを整えることが重要です。フロー状態を促進するためにも、リラックスできる環境の整備と同時に、適度な締め切りや課題の提供が必要です。タスクの明確化とデッドラインの設定により、社員は自律的に仕事を進めることができ、管理職も安心してリモートワークを支持できるでしょう。
リモートワーク環境でも高い生産性を維持し、社員一人ひとりが持つポテンシャルを最大限に発揮することで、組織としての継続的な成長を実現しましょう。
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)、IGPIシンガポール取締役CEO
早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト&ヤングに入社。その後、日本コカ・コーラ、リヴァンプなどを経て、経営共創基盤(IGPI)に入社。現在はシンガポールを拠点として日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。細谷功氏との共著書に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(ダイヤモンド社)がある。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社)が初の単著。