変化が激しく先行き不透明の時代には、私たち一人ひとりの働き方にもバージョンアップが求められる。必要なのは、答えのない時代に素早く成果を出す仕事のやり方。それがアジャイル仕事術である。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社)は、経営共創基盤グループ会長 冨山和彦氏、『地頭力を鍛える』著者 細谷 功氏の2人がW推薦する注目の書。著者は、経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)でIGPIシンガポール取締役CEOを務める坂田幸樹氏。業界という壁がこわれ、ルーチン業務が減り、プロジェクト単位の仕事が圧倒的に増えていくこれからの時代。組織に依存するのではなく、私たち一人ひとりが自立(自律)した真のプロフェッショナルになることが求められる。本連載の特別編として書下ろしの記事をお届けする。

「生成AI時代」に活躍するために必要なポイントPhoto: Adobe Stock

「人間対AI」というレベルの低い議論をしない

 昨年末からChatGPTやBing、Google Bardのような生成AIが一世を風靡しています。インターネット上や書店には生成AI関連の記事や書籍があふれ、多くの企業ではどうやって生成AIを使っていくのかを日夜検討しています。

 生成AIを使ったことのある皆さんは、まるで人間と対話しているかのような錯覚に陥ったこともあるのではないでしょうか。「AIの民主化」ともいわれているように、様々なリソースが誕生しAIを利用することのハードルが下がってきていることで、プログラミングができなくても誰でもAIを使えるようになりました。

 そのせいかもしれませんが、「人間対AI」や「AIによって●や●といった仕事は奪われる」といった雑な議論が見受けられます。この問いに挑んだところで次にとるべきアクションが見つかるわけでもなく、これらの議論に時間を割くのはあまり意味がないでしょう。

 一方で、私の周りには、仕事の解像度を上げてAIを有効活用した結果、活躍の幅を広げている弁護士や経営コンサルタントなどがたくさんいます。

人は、付加価値の高い業務へ集中する

 仕事は「問いを立てる」「インプット」「変換」「アウトプット」「判断」の5つのプロセスに分けることができますが、生成AIは「インプット」「変換」「アウトプット」のプロセスにおける多くの作業を人間の代わりに行うことができます。人間の脳の機能拡張と言っても過言ではないでしょう。

 代わりに人間は「問いを立てる」ことや「判断」に多くの時間を費やすことができるようになります。先の弁護士や経営コンサルタントは、AIを有効活用することで、より付加価値の高い業務に集中しているともいえるでしょう。

「問いを立てる力」を鍛えれば、より大きな構想を描ける

「問いを立てる力」は、理想と現実のギャップを埋めるために解かなくてはいけない問いを設定する力のことをいいます。すべての構想は、この問いを立てる力が起点となります。そして、AIを活用し、構想段階のプロセスにおける役割をAIとうまく分担することで、より大きな構想を描くことが可能となるでしょう。

 この独自の未来を構想する構想力こそアジャイル仕事術の本質であり、答えのない時代にすばやく成果を出すには必要不可欠の能力となります。

「アジャイル仕事術」では、構想力を高める方法以外にも、働き方をバージョンアップするための技術をたくさん紹介しています。

坂田幸樹(さかた・こうき)
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)、IGPIシンガポール取締役CEO
早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト&ヤングに入社。その後、日本コカ・コーラ、リヴァンプなどを経て、経営共創基盤(IGPI)に入社。現在はシンガポールを拠点として日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。細谷功氏との共著書に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(ダイヤモンド社)がある。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、2022年6月29日発売)が初の単著。