オリンピック選手やトップアスリートが導入している

 マスコミは私を「マンチェスター・ユナイテッドの〈スリープコーチ〉」という肩書きで紹介して、記事にこんな見出しをつけた。

「彼の仕事は?夜に選手を寝かしつけているのか?」

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 私が実際に行ったのは、トレーニング場に併設の「睡眠回復ルーム」を導入したことだ。世界初の試みだった。現在ではトップクラスのチームの多くがこの施設を備えているが、最初に取り入れたのはマンチェスター・ユナイテッドだ。

 これが話題を呼び、口コミが広まった。ユナイテッドの元に、イングランドサッカー協会の理事アンディ・オールドノウとイングランドの理学療法士のゲイリー・レーウィン(彼はアーセナルの理学療法士も務めていた)がやってきた。

 私は代表チームと仕事をし、新しい寝具を取り寄せ、選手たちの習慣改善のアドバイスをした。ゲイリーが私の指導の効果を認めて、一緒にアーセナルでも仕事をしようと誘ってくれた。アーセナルでは、新監督のアーセン・ベンゲルが、サッカー界の従来のアプローチを大幅に変えるべく奮闘していた。加えて、早い時期からスポーツ科学を取り入れていたボルトン・ワンダラーズの当時の監督サム・アラダイスからも声がかかり、関わらせてもらった。

「小さな改善」の積み重ねがすべてを変える

 その後、イギリスの自転車競技連盟ブリティッシュ・サイクリングとの仕事を始め、プロ自転車ロードレースチーム「チームスカイ」への睡眠指導も行い、ツール・ド・フランスでの成功に貢献した。

 これは、ゼネラルマネジャー兼監督のサー・デヴィッド・ブレールスフォードの「マージナル・ゲイン(小さな改善の積み重ね)」というアプローチの一環だった。私は自転車選手のために、持ち運びできる寝具を考案し、移動先のホテルで、ベッドの代わりにその上で寝てもらった。

 イギリスのオリンピック選手とパラリンピック選手からも声がかかり、ボート、セーリング、ボブスレー、BMX、シクロクロスなどのアスリートたちに関わった。また、ラグビーチームとクリケットチーム、サッカー界ではさらにマンチェスター・シティ、サウサンプトン、リバプール、チェルシーなどのチームに指導をするようになった。

 スポーツ界の「睡眠革命」はイギリス国内にとどまらなかった。何しろ眠りは全世界共通なのだ。

 私はヨーロッパの代表的なサッカーチームにも招かれた。そのひとつがレアル・マドリードで、ここで私は、トレーニング場に併設された豪華アパートメントを、世界有数の名選手にとって理想的な「回復ルーム」に改造するアドバイスをさせてもらった。

 さらに、オランダの女子ボブスレーチームを2014年の冬季オリンピック前に指導し、自転車競技では遠くマレーシアの選手のコーチを引き受け、アメリカのNBA、NFLのチームにも助言させてもらった。

 そんなことができる立場になれたのは、私がプロのスポーツ界における睡眠アドバイスの第一人者であったこと、そして、マンチェスター・ユナイテッドのファーガソン監督が、新しいアイデアを取り入れ、その流れが自分がトップにいる時代だけで絶えることを望まず、私の試行錯誤を寛大にサポートしてくれたからだ。当時、彼はこう言っていた。

「これはまさしく、スポーツの世界における途方もなく素晴らしい進化だ。私は心から支持をする」

(中略)