OECD調査によれば、日本人の平均睡眠時間は先進国の中で最短。睡眠を削って働いている姿が浮かび上がるが、睡眠には適切な質と量があり、6時間睡眠の人は、徹夜組と同じパフォーマンスしか発揮できない。生産性を上げるには、日本人はもっと寝るべきなのだ。1万人の脳を診た脳内科医が睡眠の改善法を提案する。本稿は、加藤俊徳『中高年が朝までぐっすり眠れる方法』(アチーブメント出版)の一部を抜粋・編集したものです。
世界一短い
日本人の睡眠時間
日本人の勤勉さは世界にも知られるところです。「勤勉」をどう定義するのかという問題もありますが、やはりひとつには、仕事をする時間が長いということがあるでしょう。
残業や仕事の後の付き合い、子どもの塾や部活動の世話、そういった数々の用事で「忙しい」という日本人は多く、それは通常、悪い意味には使われにくいでしょう。忙しいとは「充実している」「会社や社会に必要とされている」というニュアンスを含むことが多々あります。これも中毒の一種と考えられます。
そんな日本人の睡眠時間は、世界一短いというデータがあります。経済協力開発機構(OECD)の2018年発表によると、日本人の平均睡眠時間は加盟30カ国の最下位です。
平均7時間22分で、OECD平均の8時間25分より1時間以上少なくなっています。
世界で一番眠らない国。それは世界一、睡眠に対する理解の遅れている国ということでもあります。日本は世界一の睡眠後進国なのです。
6時間睡眠のパフォーマンスは
徹夜の人と変わらないレベル
夕食をとって片づけを終えて9時すぎ。それからいろいろな家事をしたりテレビを見たりスマホをいじったりしながら風呂に入って布団に入ると11時を過ぎ、布団に入ってまたスマホをいじり、寝付く頃には12時……。
そんな人も多いのではないでしょうか。このような毎日を送っている人は、完全に不眠中毒です。睡眠時間を削ってまでするほど大切なことはありません。睡眠時間の確保が第一優先で、残りの時間を使ってほかのことをするのが正しい行動です。
明日テストだとしても、目を通しておきたい重要な仕事の資料があっても、起きる時間の7時間以上前に寝るべきです。1日6時間睡眠の人は、7時間睡眠の人に比べて1週間で7時間足りず、すでに1日分不足しているのです。ワシントン州立大学とペンシルベニア大学の研究チームが、「8時間睡眠」と「6時間睡眠」の2つのグループに分け、2週間にわたって実験を行いました。
その結果、6時間しか眠らなかった被験者たちの認知能力は、連続2日間徹夜した人たちと同レベルまで低下していました。