みんな知らない!
日本にも存在する教育格差
はっきりと認識している人は少ないと思うが、日本ではすでに教育格差が広がっている。学校の勉強だけで、塾代を一切かけずに進学校へ行ける子はまれだ。
今の日本では、文具を買えなかったり、給食費や修学旅行費を払えないなど、経済的な困難に置かれて学校生活が難しい子どもは、国や自治体から就学援助を受けることができる。では現在、就学援助や生活保護を受けている子どもがどれくらいいるのかご存じだろうか。
クラスにせいぜい1人か2人?じつはそんなレベルではない。現在、日本全国で就学援助の対象になっている児童・生徒は155万人以上(2010年度文部科学省調査)。これは児童・生徒全体の15%以上で、6〜7人に1人が援助を受けている計算になる。35人学級なら、クラスに5人以上は援助なしに学校生活ができない子どもがいる。これが今の日本の現実だ。
子どもたちは自分の生まれる場所を選べない。だからこそ、生まれた地域、家庭環境によって子どもの未来が左右されてはいけないと思うし、左右されているなら、なんとしても解消していかなければいけない。その手段として、ウェンディが示したTFAモデルは有効に見えた。
今の時代にはもう合わない!
古くなった日本の教育システム
日本の教育が抱えているのは、格差問題にとどまらない。日本の教育システムが50年前とほとんど変わっていないことも大きな課題だろう。
先生が大勢の生徒の前で一方的に教え、生徒は先生が黒板にチョークで書いていることをノートに書き写し、暗記する。以前はそれが効果的だったのかもしれないが、こういった授業では、今のグローバル化が進んで、より複雑で変化の激しい時代に求められる「課題解決能力」や「リーダーシップ」などを育むのは極めてむずかしい。
TFAが重要視しているのは「ティーチング・アズ・リーダーシップ」(リーダーシップとしての教育)。教師がそれを身につけていないことには、生徒や学校は変わっていかないし、生徒にそのリーダーシップを教えることで、生徒自身やまわりも変わっていく。ウェンディが語ったことは、まさに僕の求めている教育と一緒だったのだ。
日本の将来をもっと明るくしたい!
学校の中から教育を変える
TFAのモデルは若い優秀な人材を巻き込むことで、教育格差や教育のしくみといった根深い問題を、学校の先生だけに押しつけず、これらの問題を自分ごととしてとらえてくれる人材が育つ。そしてそういった人材が増えてくれば、必ず格差は解消できる。
教育格差の先進国とも言えるアメリカで結果が出ているのだから、日本でも導入すれば、必ず将来的にいい影響が出てくるはずだ。僕ひとりでは向き合う子の人数は限られる。でもこのしくみを取り入れられれば、多くの子どもにいい影響を与えられ、社会が変わるきっかけになる。
そして、日本では人気がなくなってしまった「教師」という職業が、アメリカでは優秀な学生が有名企業を蹴ってでもなりたがる「憧れの職業」になっている。そんな状況も心底うらやましかった。
学校の内側から教育を変え、新しいムーブメントを起こしていく。
これだ。このしくみを日本にも取り入れる!
ティーチ・フォー・アメリカの日本版をつくろう!
この講演を聞いたあの瞬間から、僕の夢は決まった。