また、この問題は日本にとっても無関係ではない。今回の件で思い出されるのは、過去に中国のものとみられる偵察気球が日本上空に飛来した件である。2019~21年にかけて3回にわたり、気球型の飛行物体が日本の上空に出現し、鹿児島県、宮城県、青森県などで確認されたというものだ。「謎の飛行物体」としてさまざまな憶測を呼び、世論を騒がせていたことを覚えている人も多いだろう。

 当時、同様の飛行物体は米国にも飛来したが、米軍は気球を撃墜、残骸を回収して分析していた。日本と米国の対応が対照的で、日本が何の対応もしないことに疑問を呈する声も上がっていた。その後防衛省は、2023年2月、この飛行物体について「中国の偵察気球と強く推定される」と断定を避けた表現で見解を述べるにとどめている。

「汚物風船」の中身が北朝鮮の現在の困窮ぶりを表していると指摘する意見もある一方で、思いのほか広い範囲に飛来している、という声もある。また、今回は韓国の出方や反応を見るための試験的なものであり、今後、さらに技術を向上させたものを韓国や日本に向けて放つ可能性も否定できない。

 6月19日にはロシアのプーチン大統領が北朝鮮を訪問、金正恩(キム・ジョンウン)総書記との蜜月関係をアピールした。一方、韓国も6月22日、米海軍の原子力空母を南部の釜山に迎え入れ、6月末には日米韓の3カ国による合同演習を予定している。今後も南北関係の動向から、目が離せない状況が続きそうだ。