5月、韓国では徴兵された兵士が訓練中に死亡する事故が2件も起き、大きな問題となっている。昔に比べ、軍の体質改善が進み、透明性も上がっているといわれるが、それでも起こってしまう痛ましい事故。少子化が進む韓国では兵士になる人数が年々減っており、今回の事故との関係もあって、「女性も徴兵対象にせよ」という声まで上がっている。(韓国在住ライター 田中美蘭)
軍の透明性と待遇改善への努力と、
それでも起こってしまう悲惨な事故
6月12日、BTSのJINが兵役を終えて除隊したことが日本でも大きなニュースになっていたようだ。ご存じの通り韓国には兵役義務があり、健康な成人男性は徴兵検査を受けて軍隊に入隊しなくてはならない。しかしここのところ、訓練中に事故や体調不良により訓練兵が死亡するという事態が立て続けに発生し、韓国では大きな波紋が広がっている。
過去にも、兵士がいじめを苦に自殺をしたり、部隊内で銃乱射事件が発生したりと、世論に大きな衝撃を与える出来事が起きており、その度に軍の閉鎖的な体質や管理体制への批判、兵役のあり方そのものを問う声が度々上がってきた。
「D.P.-脱走兵追跡官-」や「新兵~僕は超(スーパー)VIP・ソルジャー」といった、兵役の負の部分や皮肉を描いたドラマが注目や人気を集める背景には、それだけ兵役制度というものが韓国にとって切っても切り離すことのできない問題であることが表れているといえるだろう。
近年、軍は透明性と兵士の待遇改善に注力しており、その取り組みは一定の評価を得ていた(https://diamond.jp/articles/-/326627)。しかし、「最近の兵役は幼稚園並みだ」という揶揄(やゆ)の声や、今回のような痛ましい事故が起これば、軍への批判が再び巻き起こることとなる。
しかし今回の事故を見ると、単に軍だけを批判できない複雑な感情や現状が絡んでいることを感じずにはいられない。