【インド総選挙】モディ政権「事実上の敗北」で経済成長にブレーキの懸念も、GDPで「日本超え間近」と言えるワケインドのモディ首相 Photo:SOPA Images/gettyimages

事実上の敗北に
終わったモディ政権

 有権者数が9億人を超え世界最大の選挙となるインド連邦議会議員選挙が6月4日に開票された。

 結果は、モディ首相率いるインド人民党(BJP)を中核とする与党連合が293議席を獲得、定数543の過半数を確保した。同日、モディ首相は勝利宣言を行い、政権3期目の5年がスタートすることになる。

 ただ、現実は勝利と呼べる状況ではない。連立与党で目標としていた400議席に遠く及ばなかっただけでなく、モディ首相のBJPは単独過半数だった選挙前の303議席から、今回は240議席にとどまり、過半数を割り込んだ。敗北と言っても良い結果に終わったと言える。

選挙における敗因は
経済成長の中身

 これまでのモディ政権の実績は、こと経済成長という点に限れば、上出来だったように見える。2014年の総選挙で圧勝し首相に就任して以降、インドの平均成長率は5.9%、同時期の中国の成長率6.0%とほぼ互角であり、日本の0.6%は言うに及ばないが、米国の2.3%やASEAN主要5カ国(インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム)の3.7%をもはるかに凌いでいる。

 生活水準の目安となる一人当たりGDPも、2013年の1400ドル強から2023年には2500ドルと、10年間で1.7倍に上昇した。所得倍増とまではいかず、中国の1.8倍には届かなかったものの、ASEAN主要5カ国の1.3倍を上回った。多くの国民が、所得水準の向上を実感しているはずである。

 にもかかわらず、選挙結果が振るわなかったのは、インフレ、若者の失業、所得格差の拡大、長期政権への飽き、専制主義・権威主義への警戒などとされる。実際に、インドのインフレ率(消費者物価上昇率)は、最近でこそ前年比で5%を下回っているが、昨年までは7%前後に伸びが高まる時期もあった。特にエネルギーや食料品といった生活必需品の価格が上がったため、そうした支出の割合が大きい低所得者層で負担感が強かったようである。

 また、インドの失業率(都市部)は全体では6.7%であるが、15~29歳に限れば17.0%と高い(2024年1~3月期)。所得水準が上昇し高学歴化が進む一方で、産業の高度化が遅れているため、学生のレベルと求人の間にミスマッチが生じていることが原因である。経済成長はしたものの、その中身に問題があったというわけである。