2017年の発売以降、今でも多くの人に読まれ続けている『ありがとうの魔法』。本書は、小林正観さんの40年間に及ぶ研究のなかで、いちばん伝えたかったことをまとめた「ベスト・メッセージ集」だ。あらゆる悩みを解決する「ありがとう」の秘訣が1冊にまとめられていて、読者からの大きな反響を呼んでいる。この連載では、本書のエッセンスの一部をお伝えしていく。

ありがとうの魔法Photo: Adobe Stock

どんな仕事でも楽しくこなせて、「よい結果」を出せる方法がある

 ある自動車販売会社の営業部に、数年間トップの成績を続けている人がいました。

 彼を取材することになった記者が、「どうしたら、トップの成績を挙げられるのですか?」と質問したところ、「いえ、私は何もしていません」という答えが返ってきました。

 事実、彼はその日1日、新聞や雑誌を見たり、同僚とおしゃべりをして過ごしたそうです。

「表に見えていない何かがあるのではないか」と思った記者は、彼の周囲を取材することにしました。

 その結果、以下のことがわかりました。

 彼は、数百という数のお客様(お客様の家族)と、「親戚」のようなつき合いをしていたのです。

 たとえば、「ある家の子どもが高校に入学した」ことがわかれば、花束やお祝いを届ける。年ごろの若者がいれば、お見合いの相手を探してきて、「偶然」を装って会わせる。体調不良を訴えているお年寄りには、病院を紹介する。お客様の誕生日や結婚記念日には、お祝いのカードを送る……。

 彼は、お客様にとって「喜ばれる存在」になっていました。ですから多くの人が、彼とかかわりたいと思ったのです。

 彼は、お客様の「主治医」のようになっていたので、お客様は、病気のこと、家族のこと、仕事のこと、何でも彼に相談できたのでしょう。当然、車についても相談しますから、その結果として、販売成績がトップになったのです。

 おそらく彼は、車の販売に限らず、生命保険のセールスでも、青果店でも、鮮魚店でも、クリーニング店でも、何をやっても成功したと思います。

 なぜなら、彼が売っていたのは「人間性」であり、人格で勝負していたからです。

 彼が「成績のためにやっている」と考えていたら、このやり方は続かなかったかもしれません。お客様は、彼の下心を見抜いて、嫌悪感を覚えたはずです。

 ですが、彼は本気で、本音で、自らの喜びで、一人ひとりのお客様とかかわってきたのではないでしょうか。

 彼は、営業でも仕事でもなく、多くの人と「楽しくて幸せなおつき合い」をしていただけ、とも考えられるのです。

 しかも、何百というお客様に対して、同じあたたかさ、同じ思いやりを持ち続けたところに、彼の優秀さがうかがえます。

「仕事が思うように進まない」と思ったときは、この事例を思い出してみてください。仕事の原点は、「一人ひとりを大切にすること」「ひとつ1つを大事にすること」です。

 そして、お客様を大事にしたうえで、今度は、自分が「嬉しい」「楽しい」と思えることをさらに上乗せしてみる。すると、お客様に喜ばれる存在になれると思います。

 ある洋品店の経営者が「自分の趣味は釣りなので、釣り竿を店内に展示しよう」と考え、釣り竿に洋服をかけてディスプレイしたところ、売上が飛躍的に伸びたそうです。「楽しい」という気分は人に伝わるという好例です。

 相手を大事にすることができれば、どんな仕事でも楽しくこなせて、しかもよい結果に結びつくのだと思います。