2015年の発売以降、今でも多くの人に読まれ続けている『ありがとうの神様』。本書は、小林正観さんの40年間に及ぶ研究のなかで、いちばん伝えたかったことをまとめた「ベスト・メッセージ集」だ。あらゆる悩みを解決する「ありがとう」の秘訣が1冊にまとめられていて、読者からの大きな反響を呼んでいる。この連載では、本書のエッセンスの一部をお伝えしていく。

ありがとうの神様Photo: Adobe Stock

「幸せ」と「不幸」はワンセット。
一般的な「不幸」は、「幸せ」の前半分である

 丸1日、山の中で遭難をして「何も食べられなかった」とします。

 その1日があったからこそ、助かったときに口にした「一杯のお粥」が、この上なくおいしく、楽しく、幸せなものになります。

 しかし、毎日、贅沢な食事ばかりしていたら、一杯のお粥の価値はわかりません。

 一杯のお粥に喜びを感じるためには、その前に、一般的に「つらくて悲しいこと」と言われる現象が存在しなければならないのです。

「空腹」の結果として、「おいしい」という幸せが存在します。空腹の度合いが大きければ大きいほど、「おいしさ」も増加します。

 つまり、「おいしい」という幸せを味わうには、「空腹」という不幸を味わわねばならないのです。

「空腹」と「おいしい」は、独立した現象として存在するのではありません。

「空腹」と「おいしい」はワンセットであり、「空腹」は「おいしい」の前半分の現象だと考えることができます。

「幸せ」を「私」が感じるためには、その前半分の現象として、世間一般的に「つらく悲しい」と言われる出来事が必要です。

「山で遭難した」という現象があったからこそ、一杯のお粥の温かさに「幸せ」を感じることができたのです。

 私の講演会を主催してくださる方が、お正月に手首を骨折してしまいました。

 私はそのことを知って、「骨折をしたのは、はじめてですか?」と尋ねました。今までの人生で骨折をしたことはなく、「生涯に一度の出来事」だったそうです。

 私が「骨折してから数ヵ月後に、すごい出来事がありませんでしたか?」と聞くと、「ありました!」と答えました。

 その方は俳人なのですが、骨折をしてから、権威のある「俳句雑誌」の巻頭を飾ったのです。

 俳句仲間からは、「あの雑誌に選ばれるなんてすごい。おめでとう」と、お祝いの言葉をたくさんいただき、「一生に一度の快挙」だと感じたそうです。

 この方にとって、「手首の骨折」は、「雑誌に選ばれる」という幸せの「前半分」です。

 生涯に一度しか起きないようなこと(大事件や大事故)に遭った人は、それから半年以内に、その代償を支払ったことの「本体」がやってくるようです。

 自分にとって「嬉しくて、楽しくて、幸せ」だと思えることが待ちかまえているのです。

 10年に一度しか起きないような「つらい体験」をした人は、その半年以内に「10年に一度しか起きないような、嬉しい体験」をするようです。

「前半分」と「後ろ半分」で必ず「幸せのワンセット」になっています。

 ですから、「つらいこと」があったときは、「嬉しいこと」の先払いをしていると考えてみたらどうでしょうか。

 ただし、この先払いシステムには、ひとつだけ条件があります。「喜びの本体」を受け取る前に、「不平不満・愚痴・泣き言・悪口・文句を言わない」ということです。

 恨み言や不平不満を言うと、せっかく代金を先払いしたのに「商品(本体)が届かない」ことにもなりかねません。

 誰が見ても「大変だ」と思うことが起きても、ありのまま受け入れる(感謝する)。文句を言わない。

 その実践ができている人だけに、「先払い現象」が起きるようです。