この連載は、『医師が教える 子どもの食事 50の基本』の著者で、赤坂ファミリークリニックの院長であり、東京大学医学部附属病院の小児科医でもある伊藤明子先生によるものです。テレビなど多数のメディアに出演されている信頼度の高い人気の医師です。
本書の読者からは、
「子を持つ親として、食事の大切さがよくわかった」
「何度も読み返したい本!」

といった声がたくさん届いています。不確かなネット情報ではなく、医学データと膨大な臨床経験によってわかった本当に子どもの体と脳によい食事。毎日の食卓にすぐに取り入れられるヒントが満載です。今回は朝食にタンパク質を摂取することの重要性について解説します。
※食物アレルギーのある方は必ず医師に相談してください。

【小児科医が教える】「朝にタンパク質を食べる子、食べない子」。性格に出る違いとは?Photo: Adobe Stock

朝、昼、晩にタンパク質を

 タンパク質は、筋肉や骨、皮膚のもとになるだけではありません。ウイルスや菌などに感染したときに働く抗体やホルモン、幸せホルモンのセロトニンをはじめとする、脳内ホルモン(神経伝達物質)のもとにもなる大切な栄養素です。

 しかし摂取したらすぐに代謝(化学反応で別のものに変化すること)されるので、タンパク質は体の中に貯めておくことができません。ですから毎食、タンパク質を含む食事を心がけてほしいところです。

 私のクリニックの診察室でお話を聞いていると、ほとんどの子どもがタンパク質を摂っているのは「給食」、もしくは「夕食」。「朝食」にタンパク質を摂っている子は少数です。焼き鮭や豆腐のみそ汁を朝食の献立に加えてみてください。

 朝食、昼食、夕食、それぞれでタンパク質の摂取を心がけましょう。毎食、手のひら(指の先まで)1杯分のタンパク質食材を食べることをおすすめします[*4]。

とくに朝食が大事!

 1995年の研究で、タンパク質をしっかり摂った人と摂らなかった人を比較したところ、「タンパク質を摂らなかった人の攻撃性が増した」という結果が出ています[*2]。

 また2017年の研究では、朝食にタンパク質をしっかり摂った人と摂らなかった人では、「しっかり摂った人は、周囲の人をより受け入れることができた」という結果が出ています[*3]。
 つまり、周りの人にやさしく接することができたということです。

 ですから朝食のメニューには、ぜひタンパク質を取り入れてください。おだやかに1日を過ごせるようになります。タンパク質のなかでも卵は取り入れやすいのでおすすめですよ。調理法はゆで卵がよいでしょう。

卵はどうして体にいいの?

「卵を食べすぎるとコレステロール量が増える」というイメージが強く、いまだに卵は控えたほうがいいと思っている方がいます。

 しかしこれは誤解です。食品に含まれるコレステロール量が血液でのコレステロールに影響しないという研究結果が相次ぎ、卵の制限はしなくてよいと発表されています(2015年)[*1]。
 卵は良質なタンパク源なので毎日1~2個食べるのがおすすめです。

 人間に必要なタンパク質は20種類のアミノ酸から構成されており、卵はその20種類のアミノ酸すべてをバランスよく含みます。体内で作ることができない9つのアミノ酸を効率よく摂れる、とても優秀な食材です。

卵を使ったおすすめレシピ

 毎日ゆで卵では飽きてしまいますね。そこでおすすめなのがこちらのレシピ。
 タンパク質豊富な卵焼きに、さらにタンパク質系の具材を混ぜて、栄養満点にしてしまいましょう!

◆アレンジ卵焼き◆

作り方
いつもの卵焼きに、好きなタンパク質系の具材を混ぜて作る。
1つでも、複数の具材を混ぜても楽しい。

具のアイデア
◆ 魚介系:しらす、桜エビ(少し砕いてもOK)、たらこや明太子、うなぎやあなご
◆ 野菜系:刻んだねぎ、小さく刻んだパプリカ、トマト
◆ その他:すりゴマ、かつお節、あおのり、チーズ

 お弁当のおかずとしても使えますよ!

(本原稿は伊藤明子著『医師が教える 子どもの食事 50の基本から一部抜粋・編集したものです)

*1 菅野道廣. 卵と健康:コレステロール問題を中心に. 日本食品科学工学会誌. 2019; 66(9):362-367.
*2
 Cleare AJ, et al. The Effect of tryptophan depletion and enhancement on subjective and behavioural aggression in normal male subjects. Psychopharmacology (Berl). 1995 Mar; 118(1):72-81.
*3
 Strang S, et al. Impact of nutrition on social decision making. Proc Natl Acad Sci U S A. 2017 Jun 20; 114(25):6510-6514.
*4
 Tagawa R, et al. Dose-response relationship between protein intake and muscle mass increase: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Nutr Rev. 2020; 79(1):66-75.