純米大吟醸「獺祭」を世界的なブランドに育てあげた旭酒造。2023年にはアメリカ・ニューヨーク州に酒蔵を建設し、米国ブランドの純米大吟醸「DASSAI BLUE」の製造に取り組む。自ら現地に移住して陣頭指揮を執る桜井博志会長に、リーダーシップについて聞いた。(旭酒造代表取締役会長 桜井博志/構成 宮下舞子)
部下をつけていい人なのか
必死になって見ている
――組織の幹部として順調に出世していく人と、途中で出世が止まってしまう人との間には、どのような差があるのでしょうか?
その時々で「変われるかどうか」だと思います。例えば、係長として出来がいいから課長に出世するわけですね。でも、課長になっても「係長だった時の自分」で居続けてしまうと、単なる“出来の悪い課長”でしかないわけです。だから、出世が課長止まりになってしまいます。
求められる役割が変わるので、課長になって変われる人は部長になれるし、部長になって変われる人は取締役に上っていけるのではないでしょうか。変われるかどうかは、その時の自分を否定できるかどうかにかかっています。人も企業も同じで、守りに入ったらダメになるんですね。常に変化することが大事です。
例えば日本酒をもっと売る方法はないのかと聞くと、日本の生活様式が洋風化しているから、消費量が減っているからとか、できない理由だけは理路整然と返してくる人がいる。「だから仕方がない」と。言い訳を始めて守りに入るとダメですね。
――「部下を持たせてはいけない人」なのか、「持たせていい人」なのか、どのように見極めていますか。
人材は組織の生命線ですから、部下をつけていい人なのかどうか、必死になって見ます。私もずっと経験してきているので、上に対してだけきちんと見せようとする人はわかります。