警察庁の発表によると、2023年度の行方不明者は約9万人。そのうち9歳以下の子どもは1100人を超える。大半は所在確認されているが、依然として見つからない人もいる。最悪のケースの一つは誘拐事件だろう。もし、不審者に狙われ、声をかけられた場合、どうすれば逃れられるのだろうか?
そんな疑問にこたえる本が、池上彰総監修『いのちをまもる図鑑 最強のピンチ脱出マニュアル』(ダイヤモンド社)だ。本書では、自然災害から犯罪まで、子どもが遭遇しうるあらゆる危険から身を守る方法を網羅的に紹介している。今回の記事では、本書の第4章「犯罪からいのちを守る」の監修者であり、危機管理の専門家・国崎信江先生に、不審者からの逃げ方を聞いた。(取材・構成 / 小川晶子)
「他人に話しかけられたら距離をとる」のが基本
――前回の記事では、誘拐犯の「あやしいさそい文句」を見抜く方法を伺いました。でも、あやしい人物を見抜いて断っても、しつこくされた場合はどうしたらいいでしょうか?
国崎信江氏(以下、国崎):まず、話しかけられたときに距離をとっておくことが大事です。大人が本気で腕をつかんできたらふりほどけないので、大人と自分が手を伸ばしても届かない距離で話しましょう。
――なるほど、家庭で、子どもと一緒に練習してみるとよさそうです。
「タッチ&ゴー」で逃げる練習をしておこう
――距離をとっても、相手が近づいてきてしまったら、どうすればいいでしょう?
国崎:もし近づかれてつかまりそうになったら、「タッチ&ゴー」で逃げます。パッとしゃがんで地面にタッチし、その瞬間、すばやく不審者と反対側に向きを変え、思いっきり走って逃げるのです。『いのちをまもる図鑑』では、図解で方法を説明しています。
――ただ方向転換して逃げるのではダメなんですか?
国崎:普通に走って逃げようとするとつかまってしまいます。一瞬、しゃがむ動作を入れることによって逃げられるんです。
――そうなんですね! 子どもはこういう動きが得意そうです。
国崎:現役の警察官や自衛隊の方などに、「今から子どもがこうやって逃げるからつかまえてみてください」と言っても、つかまえられなかったんですよ。力や体力に自信のある男性が、あらかじめ子どもの動きをわかったうえでつかまえようとしても難しいんです。ポイントは、しっかりしゃがむことです。中途半端に体を低くするのではなくて、完全にしゃがんでから向きを変えて走り出す。すると、大人にはもう対応できません。子どもの俊敏さを活かした逃げ方ですね。
――今度子どもと公園に行ったときに、一緒に練習してみたいと思います。
危機管理アドバイザー。危機管理教育研究所代表
女性として、生活者の視点で防災・防犯・事故防止対策を提唱している。国や自治体の防災関連の委員を歴任。『10才からの防犯・防災』(永岡書店)や『おまもりえほん』(日本図書センター)などの監修もつとめる。
※本稿は、『いのちをまもる図鑑』(監修:池上彰、今泉忠明、国崎信江、西竜一 文:滝乃みわこ イラスト:五月女ケイ子、室木おすし マンガ:横山了一)に関連した書き下ろし記事です。