サラリーマンの社会保険料は隠れた税金!未納者の穴埋めや「後期高齢者支援金」は公平か?写真はイメージです Photo:PIXTA

われわれ国民を悩ます「社会保険料」。国民年金には片働きであっても第3号被保険者のような措置はないし、一方で、厚生年金の保険料の一部は、保険料未納者の穴埋めなど国民年金への補助に充てられてきた実態がある。このような不均衡を正すべく、経済学者である筆者が提案するのは「社会保険料を“社会保障の目的税”とする」というもの。そのメリットと運用法について、具体的にイメージしてみよう。本稿は、佐藤主光『日本の財政―破綻回避への5つの提言』(中公新書)の一部を抜粋・編集したものです。

国は社会保険料の二面性を
うやむやに放置してきた

 日本は「国民皆保険」と呼ばれ、医療に掛かる際の健康保険、年金を積み立てる厚生年金、介護サービスを受ける際の介護保険などがある。しかし、皆が同じ保険に入っているわけではなく、それぞれの働き方によって、加入する保険が分かれている。

 例えばサラリーマンなどの被用者であれば、医療保険は組合健保や協会けんぽに、年金は厚生年金に加入する。保険料は、労使で折半され、収入に対して概ね比例的となる(ただし、保険料に上限あり)。片稼ぎ(専業主婦・主夫)世帯の場合、配偶者は「第3号被保険者」となり保険料は生じない。

 他方、非正規(短時間)労働者や自営業者・雇用的自営(フリーランス)の保険は異なる。彼等が加入する国民年金の保険料は、定額(2023年度は月額1万6520円)だ。国民健康保険(市町村国保)の保険料には所得に応じた所得割(上限あり)や、世帯人数で決まる均等割がある。しかし彼ら彼女らが、片稼ぎであっても第3号被保険者のような措置はない。

 そして社会保険料の意義(目的)に着目すると、疾病したとき、高齢になったときに給付を受けるための保険と、「世代間の助け合い」といった再分配、その2つが混在する。後者は事実上、税としての役割に相当する。

 社会保険の性格上、こうした二面性はあってしかるべきとの見方もあるかもしれない。しかし、国は社会保険料の説明責任を損ねてきた面が否めない。

 つまり、勤労世代に保険料を課すときは保険の意義を前面に出す一方、給付と負担に関わる世代間格差への批判などには、社会連帯(再分配)に基づき「損得勘定は馴染まない」といった具合だ。他方、こうした二面性は、制度の見直しを困難にしてきた。

労働者の家計を押しつぶしながら
社会保障を謳う社会保険料の矛盾

 かつて、基礎年金の財源を全て消費税で賄うという年金改革案があった。高齢者の最低限の生活を支えるという福祉の観点からは容認されても、保険の視点からすれば、保険料を払ってきた高齢者と未払いの高齢者との間で不公平と判断されてしまう。結果、制度改革は頓挫する憂き目にあった。