
佐藤主光
サラリーマンの社会保険料は隠れた税金!未納者の穴埋めや「後期高齢者支援金」は公平か?
われわれ国民を悩ます「社会保険料」。国民年金には片働きであっても第3号被保険者のような措置はないし、一方で、厚生年金の保険料の一部は、保険料未納者の穴埋めなど国民年金への補助に充てられてきた実態がある。このような不均衡を正すべく、経済学者である筆者が提案するのは「社会保険料を“社会保障の目的税”とする」というもの。そのメリットと運用法について、具体的にイメージしてみよう。本稿は、佐藤主光『日本の財政―破綻回避への5つの提言』(中公新書)の一部を抜粋・編集したものです。

「国債は国民の資産」って本当?経済学者が教える「良い借金」と「悪い借金」の根本的な違い
景気が変動する中で、国債は財政の調整弁となるものだ。しかし、景気の動向に拠らない構造的な赤字まで国債で賄おうとするのは、将来世代にツケを回す借金にほかならない。「国債は国民の資産」とも言われているが、果たして本当にそうなのか?経済学者である筆者が、本来あるべき財政赤字の規範について問いかける。本稿は、佐藤主光『日本の財政―破綻回避への5つの提言』(中公新書)の一部を抜粋・編集したものです。

「税収は過去最高、防衛増税なんて必要ない」は本当か?経済学者がキッパリ指摘
ウクライナ侵攻やパレスチナ情勢、北朝鮮のミサイル発射など、国際情勢の緊迫度は増すばかり。日本の防衛費は2023~27年度の5年間で計43兆円に増額することになったが、その財源は歳出改革や余剰金など、不確定要素のある税外収入に頼るところが大きい。日本の抑止力を強化するために不可欠な“持続可能な財政”について、増税の決断も含めて本気で向き合う時がきている。本稿は、佐藤主光『日本の財政―破綻回避への5つの提言』(中公新書)の一部を抜粋・編集したものです。

政府の総合経済対策は所得減税に象徴される一時的な需要喚起策が柱だが、既に物価目標を超えているインフレの加速が懸念される。必要なのは中長期の視点での成長力強化の取り組みと税収増で財政健全化を進め将来の財政余力を残すことだ。

「新しい資本主義」を具体化する「骨太方針2022」は「人への投資」などを掲げるが財源の裏付けに欠く。歳出を量的にただ増やすのではなく予算全体を見直して新たな財政ニーズに重点化しないと絵に描いた餅だ。

政府は21年度補正と22年度当初予算を合わせた「16カ月予算」でコロナ対策と「成長と分配の好循環」を実現するというが、効果が怪しい事業もあり、「バラマキ」「規模ありき」「補正回し」を象徴する予算編成だ。

岸田新政権の「分配重視」には財源確保が重要だ。今の財政状況を放置する政治の「不作為」は将来の財政危機のリスクを残す。成長と財政健全化と格差是正を「三位一体」で進めることだ。

2021年度一般会計予算はコロナ対策と社会保障費の増加で歳出規模は過去最高更新した。コロナ対応はやむを得ない面はあるにしても、野放図な財政膨張はコロナ禍が財政危機に「転化」するリスクをはらむ。

菅新政権はアベノミクスの「継承」を掲げるが、コロナ禍でも財政規律を立て直す工夫が重要だ。コロナ対策の歳出歳入を「別勘定」にし、社会保障は財源確保と効率化を進めて持続可能にする必要がある。

新型ウイルス問題の経済対策は感染拡大の抑制段階では景気浮揚より雇用確保や収入が減った事業者らの生活保障を優先すべきだ。一律の現金給付は人気取りの政治的効果はあっても経済的効果は疑わしい。
