もっとも、本来は被用者ではないフリーランスやギグワーカーに被用者保険を適用するのは実効性に疑問がある。また現行の社会保険制度では、アルバイトや副業など就業先が複数あるとき、保険料は主たる雇用主からの収入のみに留まる。

 仮に年間400万円の収入を1雇用主のみから得ているときと、複数の雇用主から受けている場合では保険料に違いが出る。これでは勤労者間での公平に反する。政府も検討を進めているが、具体的な制度設計はまだ打ち出されていない。

誰かのために使われる税なのか
自分の将来に備える保険なのか

 社会保障の財源は消費税と社会保険料からなるが、両者の役割に線引きをするのはますます難しくなっている。端的にいえば、税は財務省が、保険料は厚労省が管轄しているという違いに過ぎない。ではどうするか?一案は、再分配的な現状に即して社会保険料を租税化する、つまり、社会保障の目的税とすることだ。

 この「社会保障目的税」は所得を課税ベースとし、税率は穏やかな累進構造とする。一定額を控除することで、現行の保険料減免に当たる機能を確保することもできる。課税対象には給与等勤労所得に加えて、年金、金融所得なども含む。

 ただし、社会連帯を目的とする税でもあるため、年金や金融所得の控除は最低限に抑え、広範な所得を課税基盤とする。なお、複数から給与所得を受けているケースでも、合算した所得を対象にできることも租税化のメリットといえる。

 課税の対象は所得に応じ、雇用形態に拠らない。よって正規雇用と非正規雇用との間で代替を誘発しない。また、一定の控除額があるため、いわゆる「130万円の壁」も解消される。更に年金にも課されることから「年齢」ではなく(支払い)「能力」に応じた負担を徹底できる。その税収は社会保険の中の再分配に充てることで保険部分(機能)との「棲み分け」を行う。

 医療でいえば、高齢医療費への拠出金(特定保険料率相当分)を社会保障目的税で賄うものとする。年金については基礎年金に関わる制度間補助、つまり国民年金の未納者分や3号被保険者分や世代間再分配に充てる。これまでの再分配分がなくなる結果、残った社会保険料は純粋に保険(受益者負担)としての機能に純化できる。例えば健康保険料は、自分と、自らが加入する組合の医療費に充当される。

 これはフランスの「一般社会税」に類似した仕組みともいえる。1991年に創設されたフランスの一般社会税は、給与など稼働所得のほか、年金などの代替所得、利子・配当などの資産性所得を課税対象とする。