お盆休みは、仕事の仕方をじっくり振り返るのに最適なタイミング。普段は忙しすぎて目の前の仕事や目標以外のことはなかなか考えられないという人も、いちど立ち止まり、仕事のやり方を振り返ってみては。そのときに考えたいのが「仕事で関わる相手と信頼関係を築けているかどうか」です。上半期も残りわずかとなるこの時期に、見直してみてはいかがでしょうか。
そこで今回は、2024年6月に発売するとたちまち重版となり、「仕事の本質を学べた」「お客様とのエピソードの数々に5回は泣きました」と反響を呼んでいる記憶に残る人になるの著者・福島靖さんと、株式会社Omoitsukiの代表であり『大人の夢の叶え方』の著者でもある幸義一さんに、人から信頼を得るためのコツについて話していただきました。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)

【元コミュ障営業が明かす】一度会っただけで相手の「記憶に残る」第一印象のコツPhoto: Adobe Stock

エヴァンゲリオンみたいな「名刺」

福島 靖(以下、福島) 幸さんは、リアルで人とお会いしたときに何か心がけていることはありますか?

幸 義一(以下、幸) やっぱり、自分を覚えてもらうことですかね。でも僕、すごい人見知りなんです。なので名刺交換して、覚えてもらおうにも、そこから会話が続かないという悩みが営業マン時代からずっとありました。
 そこで独立したとき、エヴァンゲリオンみたいな名刺をつくったんです。

福島 エヴァンゲリオン?

 オープニングとかで、黒背景に「使徒、襲来」みたいな文字が並ぶシーンがあるんですけど、それを真似て、僕を表す単語やキーワードを32個ぐらいバーっと敷き詰めた名刺をつくったんです。「さいたま愛」とか「家のWifiが弱い」とか、普通の名刺には書いていないようなどうでもいいことも交えて。

福島 名刺って、名前があって、社名、役職、電話番号、メールアドレスとか書いてあるのが普通ですよね。そのなかで、そんなパーソナリティな情報が書いてある名刺をもらったら一発で記憶に残りますね。

口ベタなら、相手に話してもらえばいい

 これの何がいいかというと、相手の方から何か聞いてくれるんですよ。
「このレモンサワーってなんですか?」「Wi-Fiが弱いって書いてますけど?」「出身はさいたまなんですね」とか。
 そうやって、会話のとっかかりをつくる工夫をしています。

福島 なるほど。これならたしかに、口下手な人でも会話がはずみますね。

 しかもその名刺、特殊な厚紙で刷っていたので、1枚で名刺7枚分の厚さなんです。ほぼメンコですよ。すると受け取った人は、「これ、いくらしたんですか?」とも聞いてくるんです。

福島 いくらしたんですか?

 1枚刷るのに200円です。

福島 それは、インパクトがすごいです(笑)

「Uber Eats」への挑戦

 そう言う福島さんも、印象に残るための工夫はめちゃくちゃされてますよね。

福島 そうですね。僕も幸さんと同じで、初対面での最初の印象にはかなりこだわっています。営業時代はもちろんですが、去年、Uber Eatsの配達員に挑戦したときもそうでした。

 やられてましたね。あれはなんでだったんですか?

福島 お客様との接点が少ない仕事でも自分の印象を残せるかを、試してみたかったんです。
Uber Eatsって商品が届いた後に、アプリで配達員を評価する画面が出るんです。そこで、とくに対応がよかった人にはチップを送ることができます。ここで思わずチップを送りたくなる配達員ってどんな人なのかなって思ったことがあって。それで、自分で試してみることにしたんです。

 そうだったんですね。たしか独立直後とかでしたよね?

福島 そうです。だからとても忙しくて、仕事の合間に50配達だけやると決めて、家にあるママチャリで配達していました。子どもを乗せて保育園まで送っているやつです。時間も夜中とかになるわけですから、めちゃくちゃ生活に困っているお父さんみたいな感じでした。

あらゆる接点で「信頼」を意識する

 具体的には、どんな工夫をしたんですか?

福島 まず、お客様と配達員との接点を全部書き出しました。これは今のコンサル先のクライアント企業さんでもやるんですけど、お客様の体験を時間軸に沿って書き出すんです。注文して、待って、届いてって。いわゆるカスタマージャーニーと呼ばれるやつです。

 すると、一番最初の接点はプロフィール画面だと気づいたんです。配達員の写真も載っているのですが、見た感じ、ここを重視している配達員さんはあまりいませんでした。なかには、インターホンに映ったとき「ちょっと中に入れたくないな」と感じてしまうような格好の人もいました。

 そこで僕は、あえてをスーツ着て、ネクタイを締めた写真にしました。

 他にも、置き配のときは地面に紙を敷いて置いたり、インターホンに映る角度に気をつけたりとか。詳しくは本に書きましたが、お客様とのすべての接点において、信頼を意識した工夫を施しました。結果、50回配達したなかで5回ほど、計1万円くらいのチップをいただくことができ、お客様にも「こんな配達員は初めてだった」と言っていただきました。

信頼は「第一印象」がすべて

 まったくの初心者でその結果は、なかなかすごいですよね。

福島 ありがとうございます。だから最初に印象を残すことって、とても大事だなと思います。
『記憶に残る人になる』でも書きましたが、人の印象って初対面でほぼ決まると思うんです。
 話術でなんとかして信頼を得ようとする人もいますが、第一印象がパッとしなかったら、その後で何を話してもたいして聞く耳は持ってもらえません。だから僕は、初対面で印象を残すことに命をかけています。

(本稿は、書籍『記憶に残る人になる』の著者・福島靖さんが行なった対談の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)

【元コミュ障営業が明かす】一度会っただけで相手の「記憶に残る」第一印象のコツ
福島 靖(ふくしま・やすし)
「福島靖事務所」代表
経営・営業コンサルティング、事業開発、講演、セミナー等を請け負う。地元の愛媛から18歳で上京。居酒屋店員やバーテンダーなどを経て、24歳でザ・リッツ・カールトン東京に入社。31歳でアメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッドに入社し、法人営業を担当。お客様の記憶に残ることを目指し、1年で紹介数が激増。社内表彰されるほどの成績となった。その後、全営業の上位5%にあたるシニア・セールス・プロフェッショナルになる。株式会社OpenSkyを経て、40歳で独立。『記憶に残る人になる』が初の著書となる。
幸 義一(みゆき・よしかず)

外資系の製薬会社、医療機器会社を経て2021年3月に起業。全くの未経験からTwitter(現X)をはじめ、約2年でフォロワーが5万人に。集客、販売、採用、PRの全てをTwitterで賄ってきた経験から事業展開。「あなたにお願いしたい」と言われる人(アカウント)になるためのコンサルティング。(株)Omoitsukiを創業し現在4期目。SNSを使って求職者を集めるSNS採用支援をメインサービスとして提供。2023年「大人の夢の叶え方」を商業出版し、著者として講演活動なども行う。