老後の話Photo:PIXTA

親が年老いてくると気になるのが、今後の住まいをどうするか。住み慣れた家に居続けたいという気持ちがあるかもしれないが、その家が「終の住処」に適しているかどうかはまた別の話だ。お盆休み、実家に久々に帰るという人は、親の暮らしに“危険信号”が出ていないか確認し、しっかり話し合っておきたい。住まいに関するさまざまなトラブルを見てきた筆者が、見ておくべきポイントを解説する。(司法書士 太田垣章子)

「半径2メートル」で暮らす高齢者も……
実家に帰ったら見ておきたいポイントとは?

 人は誰しも、亡くなるまでどこかに住みます。住まいは、生きる基盤と言っても過言ではありません。私自身は、50代で人生後半戦の生き方を考えて、60代で「終の住処」に転居することを提唱しています。ライフスタイルに合わせて住まいを変えていければいいのでしょうが、なかなかそうもいかないのが現実です。

 高齢になってしまうと、よほどの理由と強力なサポートがなければ引越しに気持ちがついていきません。その上、70歳を超えると、賃貸物件はグッと借り難くなります。

 そのため、家族と住んだ家に住み続ける人が多いのですが、果たしてその家が高齢者の終の住処として最適なのでしょうか? 親の住まいとともに、自身のことも念頭に考えてみましょう。

 高齢になると膝に痛みを抱え、階段の上り下りがつらくなるのが一般的です。そのため、戸建ての場合、1階だけで生活していて2階に「もう何年も上がっていない」という人が増えます。半径2メートルの中で生活している人もいるほどです。

 リビングに布団を引き、テレビがあって、トイレが近くて、手を伸ばせばほしいものにすぐに届く――そんな動かなくていい環境が心地良いのでしょう。

 ところが、これには落とし穴があります。2階で起こっている“変化”に気付けないのです。