寄付税制の基本を大きく変更
優遇の特例措置は正当化できず

 日本の財政制度においては、財源の偏在問題に対応するために、地方交付税制度が作られている。国税として徴収した所得税、法人税、消費税などの一定部分を、地方公共団体に配布する。本来、財源の偏りの問題は、この制度を活用・改善することによって行うべきものだ。

 地方交付税による配分は、中央集権的な仕組みの中での決定だ。ふるさと納税の基本的な発想は、そうした制度だけでは地方財政の困窮を救うことができないので、国民一人一人の意向を、税収配分に反映させようというものだ。

 公的資金の配分に関して、個人の意思を反映させることは、寄付税制によって行われている。ふるさと納税制度も寄付税制を活用するものだ。

 ただし、ふるさと納税の場合には、特例的な措置がされている。通常の寄付であれば、寄付金額から2000円を控除した金額の40%が所得税から、10%が住民税から控除されるのに対して、ふるさと納税の場合には、2000円を越える全額が控除されるのだ。

 この点において、ふるさと納税制度は寄付税制の基本に大きな変更を加えている。なぜふるさと納税だけに対してこのような優遇措置が認められるのか?その説得的な理由付けは明らかでない。

 ふるさと納税がさまざまな問題を引き起こすのは、このような特例措置が認められているからだ。したがって、まず最初に検討されるべきは、特例的措置をやめて寄付税制の原則に戻ることだ。

本来の趣旨を歪ませている
返礼品は一切禁止にすべき

 ふるさと納税では、寄付先の自治体から返礼品が送られる場合が多い。このため、事実上は「2000円の負担だけで豪華な返礼品がもらえる」仕組みになっている。これを是正するため、高額な返礼品を制約する措置がすでに何回か取られている。しかし、十分な規制にはなっていない。

 返礼品の制限だけではなく、そもそも返礼品自体を禁止すべきだ。本来の趣旨から言えば、特定の地方公共団体に財源を回したいと考える人は、そのことだけで満足するはずだ。返礼品の存在自体が、本来の趣旨をゆがませているのだ。

 松本総務相は、「返礼品目当てでなく、寄付の使い方や使い道や目的に着目して行われることが制度の意義」だと述べた。誠にその通りだが、そうであれば返礼品は一切禁止すべきだ。

(一橋大学名誉教授 野口悠紀雄)