人も財政も消える街#5Photo:PIXTA

生産年齢人口が減れば地方税が減少し、高齢者人口が増えれば福祉医療費が増加する。ダイヤモンド編集部は、各自治体の財政が30年後にどのように悪化するかを予想した「将来財政窮乏度ランキング」を作成した。人だけでなく財政も消える街をあぶり出す。特集『人も財政も消える街』(全6回)の#5ではランキングを公開するとともに、人口5万人以上の消滅可能性自治体で全国トップだった大阪府河内長野市の再生に向けた取り組みを取り上げる。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

人口が大きく減少する自治体は
人もカネも消える街になる

「2000年ごろは人口増加で有名な都市だったのだが」と大阪府河内長野市の谷ノ上浩久総合政策部理事は昔を振り返る。

 1965年の同市の人口は4万0186人だったが、2000年には12万3492人と3倍に増加した。88年ごろまで同市では大規模な宅地開発が進み、人口が急増していった。同年には10万人を超えた。

 88年以降、開発を止めた。人口の増加ペースは鈍化し、2000年をピークに減少に転じた。今年6月末の人口は9万8505人と10万人を切っている。

 2000年以降は開発が進んだ時期に流入した子育て世代の子供世代が転出し始め、かつ流入した世代が高齢化していった。22年12月時点で65歳以上の高齢者人口は3万6513人で全体に占める比率は36.3%。同時期の全国平均29.0%を大きく上回る。

 こうした状況だから当然ともいえるが、河内長野市は14年の日本創成会議の報告書、今年の人口戦略会議の報告書の双方において“消滅可能性自治体”とされた。

 国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の人口推計によると、河内長野市は、20年から50年の間に生産年齢人口が57.4%減少し、65歳以上人口も15.5%減少するものの全体に占める比率が52.6%と50%を超える。高齢者人口が50%を超えるいわゆる限界集落となってしまう見通しだ。

 生産年齢人口が大きく減少することは、市税をはじめとする税収の減少を意味する。高齢者人口は減少するが、生産年齢人口ほどには減少せず、高齢者に対する各種行政サービスにかかる費用は財政にとって負担であり続ける。結果として財政は窮乏し、“財政が消える”街となってしまう。消滅可能性自治体である同市はいわば“人も財政も消える”街である。

 今回、ダイヤモンド編集部では、同市のような“人も財政も消える”街をあぶり出すために、人口戦略会議で消滅可能性自治体とされた自治体を対象に将来財政窮乏度ランキングを作成した。

 まず歳入では現役世代に当たる生産年齢人口の増減に合わせて地方税を増減させた。歳出では、65歳以上の高齢者人口の増減に合わせて老人福祉費を増減させ、14歳以下の人口の増減に合わせて小学校や中学校などの費用を増減させた。

 そうして試算した50年時点での歳入と歳出を基に自主財源比率と財政収支の対歳入比率を求め、20年時と比べての悪化幅を計算した。

 両指標の悪化幅の偏差値と、現時点での財政状態を反映するために、22年度の、もともとの財政の豊かさを示す財政力指数と財政のやりくりの厳しさを表す経常収支比率の偏差値を合計した値で多い方からランキングした(偏差値算出に当たっては全自治体を対象とした)。人口5万人以上とそれ以外の自治体に分けてランキングを作成した。

 人口5万人以上を対象としたランキングでは、河内長野市が1位だった。ただ、人口推計は、足元の人口動態の変化によってその結果が変わり得る。

 次ページでは、再生に向けて動き始めた河内長野市の施策を検証するとともに、人もカネも消える将来財政窮乏度ランキングを公開する。