ふるさと納税はついに寄付総額1兆円に!「生みの親」菅義偉が振り返る誕生秘話宮崎県都城市でふるさと納税の返礼品について説明を受ける筆者(右)(2016年6月15日撮影) Photo:JIJI

私にとって「ふるさと納税制度」はとりわけ思い入れのある政策だ。いまでこそ国民に広く浸透しているが、その発案当時には「税の根幹を揺るがす」と官僚から猛反発を受けた。今回は、その導入の経緯と成果を振り返ろう。(第99代内閣総理大臣/衆議院議員 菅 義偉)

都市部に住みながら
「ふるさと」に“恩返し”できる制度を

 2008年に始まった「ふるさと納税」制度は開始から16年目となった23年度に、寄付総額が1兆円規模に達する見込みだ。

 ふるさと納税制度を創設したのは、第1次安倍政権で総務大臣となったときのことだ。その後、12年の官房長官就任後も制度改革に努めてきた、とりわけ思い入れのある政策でもある。当初より、「故郷に還元したい」との思いは、広く国民に支持される発想だと考えてはいた。しかし、これほどまでに活用され、想定以上に大きく育っていることを感慨深く思う。

 私自身もそうだが、地方出身者は進学や就職のために大都市に出て、地元に戻らない人が多い。その裏返しとして、地方の人口減少や過疎化の問題が深刻化しているのも現実である。

 総務大臣就任時に調べたところ、当時、子供が生まれてから高校を卒業するまでに、自治体は1人当たり約1600万円を費やしていた。そうやって、いわば手塩にかけた人材が大都市圏に出ていき、地元に戻ることなく都市部で働き、都市部の自治体に税金を納める。結果、地方の財政状況は厳しくなっていくという現状があった。

 都市部に住みながら故郷のために何かができる方法はないか。地方に活力を生み出すことはできないか。そうした考えから、「ふるさと」に“恩返し”できる制度を実施すべきだと考えたのである。

 だが当初、官僚たちは猛反発した。その最も大きな理由は「税の根幹である『受益者負担の原則』を揺るがす」というものだった。