酒は「百薬の長」か「万病の元」か…上皇陛下の執刀医が教える「上手な付き合い方」とは?写真はイメージです Photo:PIXTA

「酒は百薬の長なり」ということわざがあるが、心臓外科医である天野篤氏によると、適度な飲酒には健康寿命を伸ばす効果があるという。まだまだお酒を飲み続けたい50代〜60代の中高年の方、必見です。お酒を楽しみつつ、同時に心臓トラブルを予防する一石二鳥のアルコールとの付き合い方とは?※本稿は、天野 篤『60代、70代なら知っておく 血管と心臓を守る日常』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。

尿酸値を自慢する男性に警告!
自制が難しいなら早めに薬に頼ろう

 日本人の男性は、戦後のライフスタイルの変化などが要因となり、基本的に高尿酸血症に傾いている人が多く見られます。実際、日本では痛風患者が約100万人、また“隠れ痛風予備群”ともいわれる無症候性高尿酸血症は、500万人はいると推計されています。痛風や結石といった高尿酸血症による疾患はもちろん、心臓を守る意味でも、尿酸値をしっかりコントロールすることは大切です。

 尿酸値を下げるには、プリン体が多く含まれる肉や魚介類、アルコール類の摂取を控えるなどの生活習慣の改善が重要ですが、それが難しい人は薬による治療を検討したほうがいいかもしれません。尿酸値を下げる薬には、尿酸の生成を抑える「尿酸生成抑制薬」と、尿酸の排泄を促す「尿酸排泄促進薬」の2つのタイプがあります。これらは古くから使われているため、作用機序や副作用についてしっかり把握されていて、効果と安全性が確保されています。

 また、尿酸生成抑制薬は尿酸値を下げるだけでなく、老化防止に関与しているのではないかともいわれていますし、心筋保護の作用があって慢性心不全の進行を遅くするという副次的な効果も指摘されています。ほかにも抗血小板薬と一緒に使ったとき、少量の抗血小板薬でも血小板凝集能の抑制が高くなるという報告もあります。このように、尿酸値を下げる薬は、心臓に対してもプラスに働いていると経験的に考えられているのです。

 ですから、健康診断などの結果を受けて医師から薬による治療をすすめられた場合、敬遠することなく素直に開始したほうが望ましいというのが最近の考え方になっています。そもそも、そこまで尿酸値が高くなってしまうのは、なかなか生活習慣を改善できないタイプだからというケースが多い。

 そのため、早い段階で薬を使ってライフスタイルを変えずに尿酸値をコントロールしたほうがよい人はたくさんいます。そうした薬をうまく使うことが、痛風や結石などの高尿酸血症関連の病気に加え、心臓疾患からも体を守り、持病はあっても健康寿命を延ばすことにつながるのです。

適度な飲酒はストレスを緩和して
心臓にプラスに働いている?

 適度な飲酒をしている人は心臓発作が大幅に少ない―。

 米国でそんな研究結果が報告されました。