今年も「酷暑」の夏がやってきた。自覚症状がないまま進行する熱中症は体力を消耗しやすい中高年の方にとっては大きな脅威だ。さらに心臓外科医である天野篤氏によれば心臓トラブルや生活習慣病がある人ほど特に熱中症が重症化しやすいと指摘する。「酷暑」に向き合わざるを負えない私たちの身を守る熱中症対策法とは?※本稿は、天野 篤『60代、70代なら知っておく 血管と心臓を守る日常』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。※本稿は、天野 篤『60代、70代なら知っておく 血管と心臓を守る日常』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。
心臓にトラブルを抱えている人は
「熱中症」が重症化しやすい?
地球温暖化の影響なのでしょうか、例年、暑い夏が長く続くようになってきました。
2023年の東京のように、気温30度以上の真夏日が年間90日以上も続いてしまうと、「熱中症」への警戒は初夏から秋まで必要です。とりわけ心臓にトラブルを抱えている人は、健康な人よりも注意しなければなりません。
熱中症とは、気温と湿度が高い環境下で、体内の水分や塩分が失われたり、体温の調節機能がきかなくなったりすることで体温が異常に上昇し、めまい、吐き気、頭痛、痙攣、意識消失といった症状が表れる病態を指します。
症状により1~3度に分類され、3度=重症になると入院加療が必要です。重症では体温が40度以上に上昇し、昏睡状態を招きます。脳や心臓といった臓器の細胞は熱に弱いためショック状態になり、循環不全や急性腎障害、多臓器不全を起こして死に至るケースがあるのです。
つまり、心臓にトラブルがある人は、熱中症になってしまったときに重症化するリスクがかなりそろっているといえます。
そもそも熱中症で重症化する人は、もともと脱水に傾く体質があったり、体に備わっている体温などの調節機能が衰えたりしている場合がほとんどです。ですから、心臓疾患で心不全の予防を目的として利尿薬を服用していたり、糖尿病のように自律神経障害を来しやすい疾患があったりすると、気づかないうちに熱による体液喪失の過剰状態を起こしてしまいます。
また、脳血管疾患による麻痺が残って活動制限があると、十分な水分補給ができなくて脱水状態に傾くのです。たとえば、心筋梗塞で心機能低下がある人は、熱中症による脱水から心不全を引き起こします。
しかもこのような心不全では、急性腎障害を起こして腎不全を招く傾向が強くなります。脱水になると全身の血液量が少なくなるため、腎臓に流れてくる血液量も低下するからです。加えて心不全で心臓のポンプ機能が落ちると血液循環が悪くなり、やはり腎臓の血流が低下します。そうしたことから多臓器不全に陥り、最悪の場合、命を落とすこともあるのです。
生活習慣病の薬を使っている人も
熱中症による「効きすぎ」と副作用に要注意
次に、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病があり、その管理のために複数の薬を服用している人、その次にステロイドを含む消炎鎮痛剤や利尿薬を常用している人は、熱中症が重症化するリスクが高いといえます。