人体の構造は、美しくてよくできている――。外科医けいゆうとして、ブログ累計1300万PV超、X(旧Twitter)(外科医けいゆう)アカウント10万人超のフォロワーを持つ著者が、人体の知識、医学の偉人の物語、ウイルスや細菌の発見やワクチン開発のエピソード、現代医療にまつわる意外な常識などを紹介し、人体の面白さ、医学の奥深さを伝える『すばらしい人体』。坂井建雄氏(解剖学者、順天堂大学教授)から「まだまだ人体は謎だらけである。本書は、人体と医学についてのさまざまな知見について、魅力的な話題を提供しながら読者を奥深い世界へと導く」と絶賛されている。今回は、「山本先生、人体や医学のことを教えてください」をテーマに、弊社の新人編集者による著者インタビューをお届けする。取材・構成/佐藤里咲(ダイヤモンド社書籍編集局)。

【現役医師が患者から最も質問されること】「病気になる前にしておけばよかったこと」とは?Photo: Adobe Stock

「ちゃんと検診を受けておけばよかった」

――病気が見つかった患者さんから、後悔の言葉を聞くことはありますか?

山本健人氏(以下、山本) 患者さんとお話していて度々耳にするのは、「ちゃんと検診を受けておけばよかった」ということです。例えば、1年前に検診を受けていたらもっと早い段階でこの病気が見つかったのに……と話す患者さんは多いですね。いわゆる五大がんと言われるような肺がん・胃がん・大腸がん・乳がん・子宮頸がんは市町村で推奨されているがん検診があるので定期的に受診した方がいいですね。

――がんは早期発見できるかも重要ですもんね。検診のほかに病気になる前にできることはありますか?

山本 そうですね。自分自身で生活習慣を改善できることは進んで取り組んだほうがいいでしょう。例えば、肺がんについては、喫煙が最大のリスク因子になります。また肥満や高血圧、高血糖などは生活習慣病のリスク因子になります。これらについては、生活習慣を変えればある程度予防できますし、大きな病気に発展するリスクを減らせます。

――それ以外のがんについてはいかがですか?

山本 今挙げた5大がん以外のがんは、検診によって死亡率が下がることが十分に証明されておらず、予防も難しいものがほとんどです。にもかかわらず、必要以上に生活を縛り付けるなら、かえって辛い生き方になってしまいます。検診を受けたり、病気の予防に努めたりすることの目的は、幸せに生きることにありますからね。

自分自身が最低限気をつけるべきことを決める

――山本さんご自身は健康に対してどのように向き合っていますか?

山本 僕自身の話をすると、病気にならないために最低限必要なことは行う、それ以外は楽しいこと、自分がやりたいことをやる、とメリハリを大切にしています。おすすめなのは、健康を守るために自分でここだけは守れそうだというラインを探してみることです。

 例えば、飲酒は一日おきにするとか、通勤で余裕があるときは一駅分歩くとか……。多くの人は、自分が病気になったときに「あの生活習慣をしていなかったらこんなことにはならなかったのに……」と後悔するものです。後悔しないためには、自分が健康に生きるために「何を行い、何を行わないか」を決める、というプロセスを経ることが大切です。そして、あとは割り切って日々を楽しむのがいいと思いますよ。

「健康に気をつけた行動がとれる」ような準備体制を整える

――若い世代の人に特に気をつけてほしい健康習慣はありますか?

山本 若い世代の人は、現状病気になる確率は統計的にはとても低いですよね。若い時から病気にものすごく気を付けるということは、正直メンタル的にもしんどいと思います。その意味では、先ほど話した通り、自分が健康のためにどのラインを守るのかを決め、メリハリをつけるのが大切だと思います。

 例えば、禁煙と運動習慣については、若い時から意識しておくことをおすすめします。

 長いことタバコを吸っているとタバコに依存的になり、やめるのは大変ですよね。運動も若いときから始めていたものを継続するのは簡単ですけど、50代になってから太ってきたから運動をしよう! となってもその習慣をつけるのはとても大変です。

 また体重が重いと、ウォーキングやランニングをしようと思っても膝を痛めてしまうのでもう運動ができないなんてことはよくあることです。若い世代のうちに健康について気をつけるとしたら、年をとったときに「健康に気をつけた行動がとれる」ような準備体制を整えておくことがいいと思いますよ

(本稿は、『すばらしい人体』の著者・山本健人氏へのインタビューをもとに構成した)