社会人とは、働いてお金を稼ぐ人ではなく、
「社会をつくっていく人」
「よい目的を作るためには芸術家が一つのモチーフを何枚、何十枚と繰り返し描き直すかのようなトライ・アンド・エラーが必要」と指摘されている点も非常に重要だと思います。これを世界的経営学者ミンツバーグが「戦略はクラフティング」であると言っていることから引いている点も、ビジネススクールに身をおく立場としては理解しやすいことです。
本書は、よい目的がなく、手段ばかりが先行してしまう組織は「計画と統制によって人々を利潤の最大化に駆り立てる」と指摘します。これはまさしく90年代後半以降、多くの日本企業が陥ったワナだと思います。数字ばかりを追い求めて、よい目的を繰り返し描くことをおろそかにしてきたのではないでしょうか。
そのことを考えながら、自分自身がどう生きるべきか、ということについても思いをめぐらせました。企業にとって「利潤の最大化」が目的となり得ないように、人生にとっても「より多く稼ぐこと」が目的とはなり得ません。しかし、現実には、かなり多くの企業が利潤の最大化を目的とし、多くの人生が「稼ぐこと」のためのみに費やされているのは、とても残念なことだと言わざるを得ません。
社会人とは単に、高校や短大、大学を卒業し、働いてお金を稼ぐ人のことだと考えている人が多いかも知れませんが、社会人とは本来、「社会を作っていく人」と定義されるべきだと私は思います。そういう意味で、これは真の意味での社会人になろうとする人に読んで欲しい本です。
私たちの世代はある意味、上の世代と下の世代の「つなぎ目」に位置しています。20世紀後半の文化・文明の中を生きてきた上の世代と、それに大いなる疑問を感じ、21世紀にふさわしいビジネスのあり方や企業と社会との接点について深く考え始めた若い世代。今求められているのは、それら2つの世代の異なる価値観を「目的」という大きなフレームでつなぎながら、社会全体をデザインしていくことだ、とも感じました。
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アインシュタインも語った――「手段はすべてそろっているが、目的は混乱している、というのが現代の特徴のようだ」
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