「手段の時代」から「目的の時代」へ――はじまった目的工学の取り組みをさまざまな形で紹介する連載。『利益や売上げばかり考える人は、なぜ失敗してしまうのかーードラッカー、松下幸之助、稲盛和夫からサンデル、ユヌスまでが説く成功法則』が発売され、目的工学の考え方が少しずつ広がってきている。目的工学研究所に届いた、各界からのメッセージを紹介していく。今回は、ドラッカー・インスティテュートのリック・ワルツマン氏から。

「ドラッカーは目的工学のコンセプトに
 共感したことでしょう」

 ドラッカー・インスティテュートのエグゼクティブ・ディレクター、リック・ワルツマン氏から、次のようなメッセージをいただきました(ちなみに、ドラッカー・インスティテュートとは、クレアモント大学大学院にある、ピーター・ドラッカー氏の思想を受け継ぐことを目的とした非営利団体です。)

「ピーターも、『目的工学』というコンセプトに共感したことでしょう。というのも、『組織とは何か』、その存在意義を認識させるものだからです。企業は、定款や組織図で表されるものではなく、生身の人間が集い、社会に貢献することを通じて、自己実現や達成感を得る場です。ですから、まさしく目的が大切なのです」

 ドラッカーと「目的」と言えば、1954年に上梓された『現代の経営』、あるいは1973年の『マネジメント』で述べられている「企業の目的は顧客の創造である」(“There is only one valid definition of business purpose: to create a customer.”)、という言葉が真っ先に浮かんでくるのではないでしょうか。

 実は、『マネジメント』では、次のようなことも述べています。

「企業は――そして公共機関も――社会の一部である。その存在理由は、自分たちの利益のためではなく、社会的な目的を実現し、社会、コミュニティ、個人のニーズを満たすためである」
(“Business enterprises -- and public-service institutions as well -- are organs of society. They do not exist for their own sake, but to fulfill a specific social purpose and to satisfy a specific need of society, community, or individual. ”)

 また、1942年に発行された『産業人の未来』のなかでは、こう訴えています。