「飲み会で何を話せばいいのかわからない…」
このような悩みを抱えている人は多い。特に、自分と年齢が離れている人や、関係がまだ構築できていない人との飲み会・会食だと、話のとっかかりすら見つけづらいだろう。結局、その場にいない人の悪口で盛り上がったり、当たり障りのない話題で何とか切り抜けようとしたりする。しかし、このようなコミュニケーションでは、ビジネスチャンスや自分の成長につながる「収穫」は得られない
そこで今回は、新刊『ビジネス会食 完全攻略マニュアル』の著者で、大手広告代理店時代に最大28回/月の会食を経験した会食専門家・yuuu氏に、飲み会での会話を通じて「相手の信頼を得る方法」を伺った。(聞き手/『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者 安達裕哉氏、構成/ダイヤモンド社コンテンツビジネス部)

飲み会で、三流は「悪口」で盛り上がり、二流は「政治・プロ野球」の話題で盛り上がる。では一流は?Photo:Adobe Stock

「悪口」と「悪口への同調」は絶対NG

――会食専門家のyuuuさん的に、会食の場で「なるべく避けるべき話題」は何かありますか?

yuuu いくつかありますね。まず「政治・プロ野球」の話は、どんなに盛り上がってもビジネス上のメリットにほとんどつながらないので、自分からは話題にしない方がいいと思っています。

 プロ野球の場合、お互いの好きな球団が同じだということが事前にわかっていれば、積極的にその話をしてもいいですが、特に把握していないなら踏み込んでいく必要はありません。

 また、政治については、実際かなりの頻度で話題にのぼりますが、なるべく持論の展開を控えて「相手の出方をうかがう」のがベストです。

 もし相手の考えがわからない段階で「どう思う?」と聞かれたら、「それはけっこう難しいテーマで、弊社の中でも意見が割れています。○○さんはどのようにお考えですか?」と問い返してかわすのも一手です。

――なるほど。「君子危うきに近寄らず」ですね。

yuuu そうですね。そして、一番マズいのが「悪口全般」です。悪口は絶対NGで、自分から言わないのはもちろんですが、クライアントが「取引先のA社は仕切り方が下手で、御社の方がずっといいんだよ」などと言い出すケースは少なくありません。

 クライアントの発言にはつい同意したくなるところですが、ここで同調してはいけません。なぜなら、悪口に関する同調はいつどこで広まって、自分に悪影響が降りかかってくるかわからないからです

「そうですよね」などと少し同調しただけで、その後告げ口されて痛い目を見ることが往々にしてあるんです。

――参加者が一枚岩でない以上ありうる話ですね。

yuuu おっしゃる通りです。なので、相手が悪口を言い出したら「原則黙る」「肯定も否定もしない」「のらりくらりとかわす」のが得策です。困ったときは「なるほど、○○さんはそうお考えなんですね」と答えて、意見の表明は差し控えましょう。

 より詳しい「会話の極意」は本書で紹介しましたが、会食の場では何よりも「減点されないコミュニケーション」を心がけるのがベストですよ。

「熱い話」で意気投合するのがベスト

――逆に、どんな話に持っていけばいいのでしょうか?

yuuu ズバリ、相手と「熱い話」で意気投合するのがベストです。

 具体的な流れとしては、飲み会の序盤は話をしっかり聞いて、中盤で相手のプライベートに少し踏み込んで話を盛り上げ、最後に熱い話に持っていくのが成功パターンです

――なぜその順番なんですか?

yuuu それは、飲み会には「モーメント」があるからです。ステップごとに分解していきましょう。

 まず、序盤は緊張感があるので、全体的に少し堅めの雰囲気になり、仕事の話題が中心になることが多いです。ここは、相手の出方をうかがう時間帯なので、話をしっかり傾聴します。

 次に中盤になると、徐々にお酒が入ってくだけた雰囲気になるので、このあたりからはプライベートの話がしやすくなります。

 終盤は全員お酒が回っているので、「○○さんは、今の仕事で実現したい夢って何かありますか」などと尋ねて、熱い話を引き出すタイミングです。

 それで、相手から「俺は今の会社でこれを成し遂げたいんだ」というような話が聞けたら、自分もその熱を受け止めて「とても共感できます」「自分も、実はこんなことがやりたくて、だからこそ御社と一緒にやりたいんです」などと感情をこめた話をするんです。

――何かすごくスムーズな流れですね。

yuuu 最後に熱い話に持ちこむことで、一気に相手との距離を縮めることができます。なぜなら、ビジネスにおいて最も信頼されるのは「熱くていい人」だからです。

 このようにモーメントを意識したコミュニケーションを実践した結果、新たなビジネスチャンスを得たり、クライアントから仕事を獲得したりといった経験を僕は何度もしてきました

 熱い話を序盤にしてしまうと、相手との温度感にギャップが生まれやすいです。ある程度アルコールが入って、情熱的なトーンでも受け入れられやすい終盤に、熱をこめるのが賢い戦法だと思います。

(本稿は、『ビジネス会食 完全攻略マニュアル』の著者で、会食専門家のyuuu氏へのインタビューをもとに構成しました)

yuuu
会食専門家・幹事研修講師 
京都大学大学院修了後、新卒で大手広告代理店に入社。百戦錬磨の会食猛者達に揉まれ、最大28回/月の会食を経験。その苦戦苦闘の末に、すべての会食・食事会を誰もが成功に導くことができる、徹底的に実務に即した体系的な会食ノウハウ=「会食メソッド」を独自に生み出す。
現在は、自らセッティングした会食をきっかけに、念願のスタートアップ企業に就職。転職後も会食を通じて信頼関係を構築した企業から仕事を受けるなど、会食で人生の起点を創り出した。
『ビジネス会食 完全攻略マニュアル』が初の著書。本書特典の「珠玉の会食店/困ったときのハズさない店リスト」は、8年もの期間、ほぼ365日名店巡りを続けてきた記録の集大成。