2020年に始まったコロナ禍による落ち込みを脱した日本経済。ただ、元通りになったわけではない。デジタル化や脱炭素の潮流が加速し、物価高の影響も続く。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は大塚ホールディングスやエーザイなどの「製薬」業界5社について解説する。(ダイヤモンド・ライフ編集部 濵口翔太郎)
塩野義、エーザイの営業利益が
4~5割減!
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の「製薬」業界5社。対象期間は2024年2~6月の直近四半期(5社いずれも24年4~6月期)としている。
各社の増収率は以下の通りだった。
・大塚ホールディングス(HD)
増収率:18.1%(四半期の売上収益5894億円)
・エーザイ
増収率:マイナス4.0%(四半期の売上収益1890億円)
・協和キリン
増収率:20.6%(四半期の売上収益1274億円)
・塩野義製薬
増収率:マイナス10.7%(四半期の売上収益976億円)
・小野薬品工業
増収率:マイナス2.0%(四半期の売上収益1177億円)
今回分析対象とした製薬5社の中では、大塚HDと協和キリンが増収、エーザイ・塩野義製薬・小野薬品工業が減収と明暗が分かれた。
また、減収に陥った3社は、2025年3月期第1四半期(24年4~6月期)の利益面でも苦戦を強いられていた(大塚HD・協和キリンは12月期決算、他の3社は3月期決算)。
具体的には、エーザイの営業利益は前年同期比48.5%減の134億円、純利益は同48.0%減の106億円。塩野義製薬の営業利益は同39.7%減の281億円、純利益は同28.0%減の306億円。小野薬品工業の営業利益は同25.8%減の307億円、純利益は同22.1%減の248億円となっていた。
なお本連載では、今回取り扱った5社とは別に、中外製薬や武田薬品工業など製薬大手4社の決算を分析している(※)。別記事で取り扱った企業を含む製薬9社の中で、分析対象期間の営業利益・純利益が「2桁減」に陥ったのはエーザイ・塩野義製薬・小野薬品工業のみである。
※詳細は『中外製薬・武田薬品・アステラス…今期の純利益「7割増」予想でも“要注意”な企業は?』を参照。
これら3社の利益を圧迫した要因は何だったのか。次ページで、各社の増収率の推移と合わせて詳しく解説する。