2020年に始まったコロナ禍による落ち込みを脱した日本経済。ただ、元通りになったわけではない。デジタル化や脱炭素の潮流が加速し、円安や物価高の影響も続く。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は花王、資生堂、ユニ・チャームの「生活用品」業界3社について解説する。(ダイヤモンド・ライフ編集部 濵口翔太郎)
花王は純利益「2.6倍」
資生堂は営業赤字に純利益「99.9%減」
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の「生活用品」業界3社。対象期間は2024年2~6月の四半期としている(3社いずれも24年4~6月期)。
各社の増収率は以下の通りだった。
・花王
増収率:8.1%(四半期の売上高4222億円)
・資生堂
増収率:1.9%(四半期の売上高2591億円)
・ユニ・チャーム
増収率:7.9%(四半期の売上高2514億円)
生活用品業界の3社は、いずれも増収となった。3社は12月期決算であり、上半期(24年1~6月期)累計の業績においても増収で着地した。
だが利益面(上半期累計)に目を向けると、また違った景色が見えてくる。
花王はコア営業利益(※)が345億円(前年同期比68.2%増)、営業利益が前年同期比123.7%増(約2.2倍)の579億円、純利益が同161.1%増(約2.6倍)の434億円に拡大したのに対し、資生堂は大幅減益に陥ったのだ。
具体的には、資生堂の利益面(上半期累計)はコア営業利益は193億円(前年同期比31.3%減)、営業損失27億円(前年同期は136億円の黒字)、純利益はわずか1500万円(前年同期比99.9%減)という結果だった。
これに対し、ユニ・チャームも「コア営業利益」が前年同期比24.4%増の731億円、純利益が同14.3%増の396億円に拡大しており、3社の中で資生堂の不振ぶりが際立つ結果となった。
なお、投資家も資生堂の現状を嫌気し、それまで4300円~4500円前後で推移していた同社株は、8月7日の決算発表を機に急落。本稿執筆時点(8月29日)では3300円前後で推移している。
なぜ資生堂は収益性が“急降下”しているのか。花王の好調要因と併せて、次ページで詳しく解説する。