大学を出てから30年間、私が働いてきたのはすべて外資系の企業です。大学でシステム工学を学び、当時世界で一番真似される会社だったコンピュータ界の雄、IBMに入社しました。そこで技術者として約13年間、研究所に勤めながらコンピュータのアーキテクチャーとその美学を学び、コンピュータで世の中を変え、人々の暮らしを変えていくことに興味を持ちました。
その後、半導体設計とシステム開発の日本ケイデンス、情報テクノロジーとサービスのEMCジャパン、そして日本オラクルを経て、2004年からの5年間はアップル・ジャパンの社長をやりました。
もともとは技術者としてスタートしたのですが、EMCでは副社長としてマーケティングとコンサルティング部門を率い、オラクルでは専務として営業、開発、マーケティングの総勢1600人の大所帯を束ねました。チームリーダーとして組織を元気にしたり、経営者として社員が楽しく働ける環境づくりにも苦心してきました。
特に、IBMを飛び出してからの15年間は、アメリカ人の上司のもとで仕事をしてきたことになります。それもEMCのCEO、マイケル・ラトガース、オラクルのCEO、ラリー・エリソン、それにアップルの今は亡きスティーブ・ジョブズや、彼の後を継いでCEOとなったティム・クックなどの、ビジネス界の巨人たちとです。
彼らと直接対峙でき、同じ空間で同じ空気を吸い、新たなビジネスが生まれる瞬間をともに目撃できたことは、とてつもなく有意義で貴重な体験でした。同時に、グローバル企業でのルールや仕事のやり方を見ながら、自分なりに会得したビジネススタイルで結果も出してきました。
こうした世界ステージで戦ってきた私の経験や知恵が、これからの世界で働く人たちに幾ばくかの参考になるのではないかと思い、50代になったのを機にビジネスの最前線から身を引いて、現在は東京・表参道で「これからの日本人」を育てる私塾「山元塾」を主宰しています。
講演や企業研修、塾などで話すときには、108個の項目に分けていますが、この連載ではそのうち10個を取り出して、次回からご紹介していこうと思います。